今日は電車に乗ることにした。
1.新津(12:21発)→新潟(12:41着)
ここで言う「電車に乗る」はどういう意味か。
答えは簡単。新津駅から信越本線の各駅停車に乗り、新潟駅へ向かうことである。料金にして330円。片道20分の道のり。
なんだそんなことで、と思うかもしれないが、これは「原点」である。初心忘れるべからず。祖父とお茶を買いに行く時と、白山への初詣は数少ない「電車に乗れる日」だ。我先にとホームに下り、今日はどの車両に当たるかと胸を弾ませる。……リメンバー・少年時代である。
ちなみに楽しみなのは乗る車両だけではない。
先行するしらゆき3号が、対岸のホームへやってくる。
住んでいると新潟の雪景色は「鬱陶しい」以外の感想をもたないが、鉄道においては車両を引き立てる良き背景となることも多い。嗚呼E653系よ、神々しきアイボリーホワイト!
「……なにいってだこいつ」
2歳魚もなんj語を覚えてしまった。冷静に突っ込まれ、僕は速やかに2番線のE129系へ乗り込んだ。
普段僕が「相棒」「幼子」「弟」などと呼称するこの2歳魚だが、名前は
【マスコロ】
という。
母にそう教えたら、
「マロ」
と間違えて覚えられてしまった。訂正するのも面倒だったので、以来僕も「マロちゃん」と呼んでいる。皆さん可愛がってあげてください。
僕とマロを乗せた信越線は新津を発車する。
2両のワンマンカーはそこそこ混んでいる。世の風潮で分散登校や時差出勤がはじまったせいなのか、平日の昼間でも学生らしき若者を電車や駅で見かけることは増えた気がする。
次のさつき野へは徒歩でも行ける距離。しかしこの日は路面の状況が状況なためか、一駅で降りていく者も一定数いたようだ。もしくは乗り換えてきたのかもしれないが、どのみち歩く距離は今日は減らしたいだろう。ちなみに、さつき野~新潟間の料金は240円と、新津から乗るより90円安い。
荻川は住宅街の真ん中に駅がある。ホームに朝顔が咲いていたのをよく思い出すが、今でもあるんだろうか。ちなみに荻川を出るとすぐ、
「鉄橋だ~」
電子警笛を吹鳴し、小阿賀野川を渡る。これがいつも楽しみで仕方なかった*1。
この区間で需要が高いのは、やはり大型ショッピングモールやニュータウン、高校などがある亀田。実際この電車も亀田に到着するとそこそこの客は降り、入れ違いに部活帰りの高校生が沢山乗り込んできた。ところで、新潟地区では列車の混雑を「ドア付近の立ち客」で判断することが多い。ためしにカバンの壁をすり抜けてロングシートのほうへ移動すると、意外とスペースがある……なんてことは珍しくない*2。
越後石山から新潟までの一区間で利用する客も多いようだ。白新線の東新潟も然り、新潟駅までは地味に距離がある。だが、先日訪問なされたFF様が書き記すまで、新潟駅からの初乗り料金がそんなに高いとは知らなかった*3。越後石山を出て、すぐ右手には新潟車両センターが見えてくる。鉄オタワイ歓喜の風景だが、距離的にはたぶん邪魔になっているだろう。
ということで、
12:41の定刻通りに新潟到着。列車はそのまま越後線に入り、客をごっそりと入れ替えて内野へと向かっていった。それにしてもE129、最後尾も白髭をたくわえたなあ。あるいはホイップクリームか。どのみちハムエッグ*4には合わない。
「ボケてないで早く用事行ってきて?」
はい。
2歳に怒られて、僕は東改札を出た。
2.新幹線を見に行こう!
用事は駅南口の周辺で、短時間で済んだ*5。さて、とある場所へ行こう。
新幹線改札付近には、キャリーケースを引きずった客の姿が多くいた。ショルダーバッグひとつで、150円の入場券を突っ込んで改札を一人通り抜ける。そろそろ「なんだこいつ」と思われていても仕方あるまい。
しかし今日は入場券も多く売れたのではないか?というホームの様子である。対岸14番線にはE2系が出発を待っていて、その窓に向かって何やら手を振っている人の姿が見えた。
「帰省から戻るのかなあ?」
「県外の大学生とかが多いのかもしれないね」
相棒は言うが、親子連れの姿もそれなりに多かった。混んでいるホームが嫌なので、対岸の11・12番線側でのんびりE7系を撮影していると。
「11番線の電車乗れませんよ~?」(圧)
乗らんわ!!!!!
……失礼した。念には念を、ということで放送してくださったのだろう。だが、閉まっている扉を突破する術は、僕にも2歳魚にも無い。
ホームでのお見送り。どんな感覚なのだろうか。
何せ祖父母は父方・母方とも市内在住で、親戚に会いに遠出する!なんて文化は無かった。家族旅行へ行っても、ああしてホームで迎えたり見送ったり、というイベントがあるわけでも無かった。「里帰り」というものを大学生になって初めて経験したが、感慨があったのは最初の一年だけだったと思う。……仮にホームまで見送りに来られても、新幹線が嬉しくてそれどころではないだろう。
……いらない想像をしていると、とき328号が14番線から出発し
「列車から離れてください!」(半ギレ)
新潟駅では中々聞かない放送、そして圧だった。
レアである。我々は用意したサンドイッチや菓子パンを食べると、とき330号として発車していくE7系を見送り、退散した。……在来線3階ホームで長岡行きの電車を待っていると、何やら回送線から見慣れない車両が上ってくるのが見えた。E3系に似たシルエットの正体を知る同業者様がいたら、ぜひ教えていただきたい*6。
3.新潟(16:09発)→新津(16:29着)
長岡行きの各駅停車に乗り込み、帰路につく。
ほとんどがE129系となったことで、僕が新潟地区の在来線に抱えてきたある悩みが解消された。
【全面展望とボックスシートの有無(共存)】
オールロングシートのE127系はしかし、前が良く見えるという理由で気に入っていた。あの「ドスン!」という感覚もないので乗り心地もよかった。まあオールロングシートだったけど。
対し115系はボックス席があった。混雑時は最悪だが、ガラガラのボックスシートほど快適なものはない。ただし乗務員室は分厚く仕切られていて、前を見ようとしたら扉の小窓だけが頼りであった。
ううむ。こうして考えてみると、ボックスでくつろぎたい*7人にも全面展望かぶりつきを望む人にも、どちらの望みもかなうE129系はなんてすばらしい車両だろうか*8。どのみち夕方のボックス席は争奪戦なので、迷わず僕らは先頭を選んだ。
この20分は大変あっという間に過ぎる。
乗ってきたE129系と、後続のしらゆき8号をお見送りしてから改札を出ることにした。対岸のホームには、羽越線を新発田・坂町方面へ向かっていくキハ110の姿もある。
「今年ももっと先へ行こうね」
E653系のテールランプが遠くなっていく。「この先」はいつも、あこがれだ。
*1:ただし吹鳴義務はないらしく、鳴らないことの方が多い。
*2:訳:列車内ではドア付近に立ち止まらず、車内中ほどへ詰めましょう。
*3:越後石山ー新潟間、東新潟ー新潟間のいずれも190円。
*4:E129系のカラーリングは、鉄道ファンの間でそう呼ばれているとかいないとか。ただし、全然おいしそうだとは思えない。
*6:ff様いわくEast-iではないか、とのこと。
*7:くつろげるとは言っていない。
*8:まあ現在はGV-E400もあるし、当時にもキハ110やキハE120という素晴らしい気動車が乗り入れてはいたが、確率としてはレアすぎた。ちなみにキハ40・47で「全面展望なし、オールロングシート」という車両に当たることもあった。