むしょくとうめいのらくがき

鉄道と酒と野球ではしゃぐ4歳魚と26歳児の気ままな放浪記とか落書き 

温暖の候、いかが夢見でしょうか

 宝くじは当てるものである。運試しではない。

 

 

 

1.きたない夢をみる

 

 いつぞやの日曜朝。目覚ましのセットどころか携帯の電源すら落としていたにも関わらず、目が覚めると時計は6時ちょうどを指したところだった。

 4月に入ってからというもの、休前日に携帯の電源をOFFにし、24時前には布団に入るのがマイブームになっている。無駄な夜更かしを嫌うのと「すべてを放棄して脳味噌をリセットする」が目的だが、実にぐっすりと眠れるし、何だかんだ起きるのも(当社比で)早くなった。

 

 しかし6時は早すぎる。平日でももう1時間は寝る。まあ二度寝は気持ちいいものだから、ラッキー、と思い床に戻った。

 だが問題がある。

「トイレに行きたい」

 夕べは結構飲んだしなあ。むしろ僕が寝ている間にも堤防の役割をしっかりと務め上げた膀胱を褒めるべきである。

 無事トイレに腰を下ろした。決壊する前で良かったと安堵する。今回は特に格闘をしなくても、些細な調節だけで手入れができる。……と、ここで違和感に気付く。

 ―このトイレ、なんか変だ。

 そもそも僕の体制がおかしい。どうおかしいのか、と言われても、座っているのでもなければ跨いでいるでもなく、かといって立っているわけでもない。

 容器もおかしい。水を溜められているわけでもないし、そもそも流す穴もボタンもない。というか、シンプルに小さいし、浅い。これこそ簡単に洪水を起こすんじゃないか?不安になって触ってみた。白い容器の軽いプラスチックの音に、こんなに絶望する日がこようとは。

「これ……●●●(某「レンジで温めて食うごはん」)の空容器じゃん……」

 はい。めっちゃ汚い話で恐縮です。ちなみに現実に帰ってきてからも、ちゃんと間に合ったのでご安心を。

 

 ところで夢で思い出したのだけど、職業訓練のスピーチ3週目(=最後)のテーマは「私の夢や目標」であった。もちろん、寝ている間に見る方ではなく、いずれ現実にしたい方である。

 3カ月間の訓練生活もいよいよ残り数日となり、早々に内定が決まり、繰り上げ修了となった人も出ている。最初は「同じ教室にいるだけだから」と構えていたが、よく考えてみたら自分の経験からわかる強みや個性とか、将来への展望を分析し、仲間とあれこれ交換することでより「自分を知る」っていう経験は今まであっただろうか?単に「仲がよかった」だけではない、とても中身の濃い時間を過ごせたのは間違いない。

 そして3回目のスピーチでは、「○○がほしい」「△△へ行きたい」というものから「□□な世の中になってほしい、そのために××をして貢献をしたい」というものまで、さまざまな声があがってきた。順番が最後に近づくにつれて、聞いている他の訓練生だけじゃなく、講師までもが感極まっていたのはなかなか印象的だった。

 とはいえ、年齢、周囲の環境や社会情勢など様々な要因があり「将来の夢」とは簡単に持つことはできるものじゃない。年長~小3くらいまで「ウルトラマンになりたい」と言っていた僕は、今は変身できないのはキーの接触の問題ではないことを知ってしまっている。

 経験に裏打ちされた「長く生きたくない」という、正直な声も聞こえてきた。

 あたたかいな、と思った。機械的なものじゃない、そういう温度を持った声が、ここにはあがってくるのだから。前向きな気持ちや大きな夢があるのもそれもまた一つの声で、決して飾ることも隠すことも必要はない。

 生きやすいな、とも思った。数年前に”梨落ち”をしたときも、結局は死ぬ勇気もなくて、欲望への未練だって絶てずに生き延びてきた。ここは聞く人がにこにこと頷いてくれるけど、実はそんなに興味があるわけじゃなくて、そんなことより今日の晩飯のほうが気になっていることだって知っている。良い意味であんまり、周りはこだわっていない。だから深堀りされることも別にない。人間とは強欲で怠惰で、ときに臆病であり我儘でもある。

 

 大変申し訳ないが、僕も上の話をされたときは「もっと聞きたいなあ」と思って質問こそしたけれど、同時に「トイレに行きたいなあ」とも思っていた。僕を突き動かしているのは15年後の目標なんかじゃなく、トイレと空腹と眠気の我慢である。「私の夢」のテーマを”白幸虎仁朗”として語るなら、それは「15年以内に自身の著書を出すこと」じゃなく「ご飯を食べてトイレに行き、短くても6時間は眠る」である。そうするべきである。

 そしてある訓練生は「宝くじを当てたい、いや”当てる”」と宣言した。その時ばかりは僕は、その夢を全力で阻止したい、12億を我が物にしたいと思った。

 

 

2.なにか冷やすものを

 

 この前の朝、訓練校へ行く前にマックでアイスコーヒーを飲んだらめちゃくちゃ美味しかった。 もう、そんな気候である。

 

 どうしても4月は新年度ということもあって、環境が変わった人も多くいる。忙しない日々の束の間の休日、とはいっても、どう休んでいいものかは分からないかもしれない。それに何かと最近の休日、花見や行楽に出かけても、どうも「ぴりぴりとしている」人を多く見た気がする。

 ……気のせいかな。人出が増え、公園はよく言えば賑わった。悪く言えば混雑した。そして例えば飛び出す子どもがいて、「あぶないでしょう!なんで飛び出すの!」「はしらないでよ!はしんないで!」などと、半分怒鳴っている大人がいる。

 気温が上がったことで、頭に血が上りやすくなったのだろうか。この4月の、焼けるような暑さでもなければ空もそんなに青くない、でも冬というには少々暖かすぎるという気候が、僕はどうも苦手だ。

 

 訓練生が続々と内定を決めている。実質、授業はもう10コマ程度である。

 僕は眠れもしないのに机に突っ伏すふりをして、家ではストレッチをして、せいぜい悠長に振舞った。この前の日曜日は国道113号を東の県境まで進み、そのあと一転して西へ下りた。奥胎内の入り口や加治川沿いは満開で、小国町はまだ雪が溶けていなかった。住む場所によってはこの車を手放すかどうかの皮算用をしている。

奥胎内で一時停車 桜が綺麗!-2022.4.17

 就職面談の日、僕の順番が最初だったので「やっぱりか」と思った。そして聞いてみたら「迷ってそうな人は最初の方にしてます♡」と言われた。迷える子羊扱いである。

 そんな子羊だから、

「いかがお過ごしですか?」

「なんとかやってますがピリピリしています」

 というやりとりになる。それはそうである。

 応募書類を出してから10日以上待っているが、返信がない……という話をした。そのうえで、しびれを切らしたのでこことここにも応募する、という話をすると「いいね!」を頂いた。迷える子羊の面談にかかる時間は、案外少なかった。

 

 こちらが動くだけでなく、じっと待たなくてはいけない時間もある。これから気温が上がってきて、花粉も飛び、制限速度超過でぶっ飛ばすライダーやドライバーも増える中で待たされるのは地味にしんどい。せいぜい悠長に構えてアイスコーヒーを飲み、夜はビールを飲んで、氷枕の上に寝て待つことにする。

 

 まだ放置は続いている。送った履歴書の年齢に、1が足されてしまった!