初夏真っ盛りの不快な暑さも四季の1ページ。
1.冷房兼鼻のリモコン、空のコップ、日曜日
布団から出ようと身体を起こしたとき、顔の表面や背中を伝う湿気と、何故か鼻孔から噴き出す液体により、身体からの明確な”拒否”の意志を受け取る。こんな言い訳をしてまた秩序の崩壊した一週間を送ろうとしている。
机に向かい、本を広げたり、鍵盤を叩くフリをしてみる。ところが、ノートのページはいっこうに進まず、底だけがコーヒーの色になったコップと、崩れたティッシュの山が積まれているだけである。
鼻水が止まらない。おかげで集中する手は止まっている。鼻孔からは、春に出てくるものとは全く違う、ただの水が流れ落ちてくる。限りなく無色透明で粘り気のない鼻水は、アレルギー性のものだと聞いた事がある。
天敵・スギ花粉は去ったはず。別の粉や砂の類だろうか。それも外に降っているものではなくて、部屋の中で僕が知らぬ間に生成したり、放置しているものだろうか?
もしやと思って、【ドライ】で動かしていたエアコンを切ってみた。止まった。1時間くらい窓を開けて、またリモコンのスイッチを入れてみた。出てきた。再び鼻孔のむず痒さとともに、サラサラ透明なやつが流れ落ちてくる。実はエアコンじゃなくて鼻用のリモコンなのだろうか。ピッ、と押したら蓋が開いて、ズルズル~、と流れていくようになっている。きっとそうである。
ついにスイッチで操られるようになってしまったか、我が身体。だが、肝心の「やる気」のそれはいっこうに作動する気配がない。どこにあるのかも忘れているし、誰が押すのかも曖昧である。役割は明確にするべきである。
仕方ないからまた時間をおいて、運転中のエアコンに向かって、ピッ、と押してみた。風が止まるのと同時に、鼻からの放流が止まる。だが今度は、顔の表面を湿気が多い、背中の毛穴から熱が噴き出す。……集中できん。せめてアイスコーヒーを足すか、と思って空のコップを持ち上げると、コースターがびっしょりと濡れている。コップも汗をかいたようだ。
だが、今日ここまでの僕はコップより何もしていない。表面だけが熱を帯び、それを冷まそうと肌を湿らせる。アイスコーヒーを受け止める、という役割をきっちり果たしているコップのほうが、本来汗をかいているべきなのである。なんか、こう、虚無である。シラユキコジローよ、おまえはコップ以下なのだ―。
突き付けられる16時。空が暖色を帯びて、今週の「休日」が暮れていく。だが、そもそも僕は今、平日の概念もなかった。虚無である。汗と鼻水のついでに、涙も流れないものだろうか。
そんな6月中旬の日曜日であった。
2.風鈴、新しい建物
鈴の音を聞いて涼を感じる。アスファルトに水を打つ。……後者に至っては場合によっては逆効果になるぞ、とかつて友人に指摘されたような記憶があるけど、どうだっけ。まあゲン担ぎとか思い込みだとか、そういう類のものが、この文化に繋がっているんだと思う。
もっとも、最近できた建物の中で吊るされる風鈴は、無機質に放たれ続ける冷房を浴びて「ちりちりちりちり」と鳴り続けている。これでは涼というより、物理的に寒い。だが、木のデザインが施された頭上に、華やか且つ淑やかな鈴が吊るされていると、ほどよいあたたかさを感じる。日本人である、といえば聞こえはいいが、都合よく日本人であろうとしているだけではないのか、とも思ってしまう。
自分のことを最近「保守的」なのかな、と感じることが増えた。伝統を重んじるとか、変化を好まないとか、ずっと守られ続けてきたやり方が正しい、とか。
文面だけ見れば、「どちらともいえない」もしくは「あまりあてはまらない」をマークしたくなる。5択あるのなら、1と5はまず避けて回答すると思う。そんなものは実際の事例に立ち会ってみなければわからないことで、1と答えたからといって5を拒絶する、みたいなことはよくないと思う。……僕のマークシートには、見事に中間の「3」の列に黒い粒が並んだ。柔軟・臨機応変と取るか、優柔不断・中途半端と取るか。前者と捉えてくれたあなた、是非履歴書をご一読ください。
話を戻す。僕は変化することは嫌いではない。そもそも、好き嫌いにかかわらず、変わるべきものは勝手に変わるではないか。鉄道の駅も道路も商業施設も、必要だったから新しい姿になったのだ。あとは順応するだけである。自分の環境だって変わる。昨日は暑く今日は寒く、昨日は晴れて今日は雨だったとしても、上着の着脱と折り畳み傘の携帯で対応する、それだけのことである。……ん?
どうなのかな。実は嫌なのかもしれない。
あまり趣味趣向はこれまで変わっていないほうだ。小・中とやっていた野球は現在でも「みる・やる」の両方でなんだかんだやっているし、鉄道に関しても空白こそあったものの、再び「新幹線と特急ではしゃぐ」〇歳児と自称している。同じく空白のあったウルトラシリーズは「ジード」くらい*1から再び見始めた。
仕事も学業もこれまで、新しい分野・全く違う分野に取り組んだ、ということは少ない。小学校の算数で躓いたっきり文系のままで、高1から*2謎に国語の成績だけ多少よかったのでそのまま国文学に進んだ。もちろん専攻などといえる知識は身に付いていないが、かといってためしに心理学の本やプログラミングをやろうとしたら、神経が固まったり痙攣したりした*3。身体が拒否している!……それを「衰退」と呼ぶ方々が一定数いて、この世界はやはり変わっていくのである。
結局何が言いたかったんだろうな。新しい建物が綺麗だった話、その中の風鈴に癒された話?でもエアコンは消さないでほしい、っていう話だろうか。それはそうである。
昔書いたお話で、エアコンの風が冷たいだとか、もわんとする風とぼろい扇風機がいいみたいなことを確かに言った。だが、昨今のバグった気温じゃあ、多少冷たすぎるくらいが適温なんじゃないだろうか。夏は好きで暑いのも好きだが、家の中では話は別である。
3.おまけ(ギャラリー)
風景
SL
SL(新津駅の留置線から引き上げる&しらゆき7号とすれ違う)
食べたもの