むしょくとうめいのらくがき

鉄道と酒と野球ではしゃぐ5歳魚と27歳児の気ままな放浪記とか落書き 

【阪神タイガース】ただ、あれなだけ【2024振り返り】

 寂しい秋が来て、寒くて長い冬が今年も来た。

戦場が恋しいぜ

※長いので飛ばし推奨

 

 

 

1.あれだと何のあれもない

 

「何もないわ」

 ボロ負けした後、そう報道陣に吐き捨てたとされる岡田彰布のコメントを、今年は何度ネットで目にしただろうか。

 

言わんでも一から十まで分からなアカンの?

 思うところがなかったわけではない。同じ負けにしても、特定の選手のミスで落としたもの、作戦やベンチワークのまずさで負けたもの、単純に相手の方が出来が上だったもの、あるいは不運やミスジャッジ(と糾弾したくなるような際どいプレー)によるもの。勿論、毎回そうだったわけではない。だが、コメントしたかと思えば曖昧だったり遠回しな表現だったり、単に選手やコーチへ鬱憤をぶち撒いているだけに聞こえるもの、そして沈黙や上記の六文字。

 例えば集中打が響いて落とした試合を「エアポケット」と例えたとき、打線が沈黙した試合で主軸を糾弾したとき。選手を守るどころか突き放し、むしろ追い込みにかかるようなコメントを目にしたとき、

「ところでそう言っている側の、あっこのアレを言わんのや!」

 と、反論……いや「反感」だろうか?言っていることもやっていることも、その是非は置いといて、なんか選手はかわいそうやなあ、とか思ってしまった。かつて打たれたストッパーを「そんな完璧なやつおれへん」とか、パッと見は暴走で試合を終わらせたかに見える代走を「おれがそういう(当たりゴーの?)サインを出しているから」と庇ったり、責任を負った”いい上司”を知っているから、余計に、である。

 だが、そうではない。そういうことではない。

 

残ったのは「負け」の二文字のみ

どちらにも阪神は勝てなかった

 11月を迎え、真の覇者が決まった今、我々が手にしたものは何か。ストーブリーグとそれに沸く(というか荒れる)TLか。キャンプの映像か?……それはそうである。どういう結果になったとて、そんなに変わらないのかもしれない。讀賣や横浜とて、なのかもしれない。

 だが少なくとも、讀賣や横浜が死闘を演じている間。ソフトバンク連邦を倒し真の優勝を飾り、ハマスタで宙に舞った三浦大輔を見ている間。それでもって、やれ制度の問題だリーグの価値だなどと、TLが荒れている間。

 我々にあったものは、

讀賣にも横浜にも負けた」

 他には「何もない」のだった。

 

真理はいつも一緒

 それならば、振り返りなんぞここで終わってしまったほうがいいかもしれない。CS後、だいぶ含みを持たせた発言が、岡田からは飛んできたように思った。程なくして、岡田を「理想のリーダー」としながらも、来季の虎はまた違った姿に変わる、そう予感させる新指揮官が就いた。

 だが、誰が就任しようと少なくとも、「勝ったら嬉しいし、負けたら何もない」のは本質的に変わらない。確かに金本や矢野の残したあれが、この2年間に繋がったのではないか、と信じたい部分は多い。そういう来季に繋げる・繋がるとかいうのは置いといて、基本的にその試合、且つその1シーズンで言えば、「負けた」という事実、あとは空虚さか悔しさか、その両方を味わうだけだ。

 オイシックスの項でも書いたが、何故こうも「野球如き」で熱くなるのか、僕もわかっていない。2023年も実際は、阪神は「勝った」かもしれないが、今と見ている景色はそんなに変わらなかった、と言えなくもない。ただ、あの11月5日に第7戦を制して頂点に立った、その報をアプリの速報で知ったとき、確かに嬉しかった。距離を感じたとか、共有できずに寂しかったとも思ったが、「勝った」のは嬉しかったのだ。

 

悪夢ももどかしさもあったけど

 この2024年、うまくいった野球、幸せだった景色とは真逆の、何もかも噛み合わないなあ、うまくいかないなあ……みたいなもどかしさを感じた。5点リードで終盤を迎えても、何なら負けているかのような気がしてしまう。思い切って勝負に行って、失敗して、糾弾される。実際、悪夢であったなら早く覚めてくれ、と願う試合を、僕以上に感じた虎党は多かったはずである。

 それでも一試合勝ったら、嬉しかった。タイガースが勝って嬉しくない虎党なんぞいないだろう。それが2連敗した後の3戦目でも、何連敗中からの1勝でも、そうである。勝って六甲颪を叫び、隣の知らないヤツとハイタッチする―それが望みだからだ。

 

 だからこそ、一抹の望みを繋いで、繋いで、繋いできて、なんとかギリギリ頂点が見えてきた!という状況でやってきたのが、

ここだ -2024.9.20

 2024年9月20日金曜日、横浜スタジアムである。

 

 

2.一抹の望みを託して、背負って -2024.9.20 横浜スタジアム

 

もう「勝ってほしい」じゃなく「勝つ」

 野球場が今よりもっと身近なものであった日から、どれくらい経っただろう、と振り返ってみた。僕の生活は変わったし、世の中も変わった。一軍に限って言えば、最後に観戦した2019年9月15日の東京ドーム讀賣戦から、

「5年」

 あまりに長すぎた。

 屈辱も、頂の景色も知った

一軍戦はこの日以来5年ぶりだ -2019.9.15

 この間に僕も世の中も、色々あった。ちょうど例のあれで世の中がギャーギャー騒いでいて、もっと騒ぐべきところが全く静かだった時期である。当然、

監督は岡田彰布

 阪神タイガースも、僕の知らないうちに色々あった。

 それは試合前のオーダー表最終確認で、わかる。

 虎キチの着る「2023 Champion」というロゴの入ったTシャツを見て、わかる。

 当然ながら、

スタメン

 メンバーもまあ、多少は違う。

2023 Champion

 もっとも5年前、若返りを目指したチームに積極起用された選手が主力として定着し、かなりチームとして安定感が増したように思う。スコアボード脇のラインナップを見ていても、もう「弱そうだな」「打てなそうだな」とかは思わない。各々凄い選手なのはともかく、打線になって且つ相手と比較しても、決して見劣りせず、戦える―そんな印象である。あの頃の若手は、もう主力であり、ベテランになった。もう「TQS」だの「虎ブルダークネス」だの「地獄」だのという表現は、似合わない。

 この日のスタメンは、

  1. センター近本光司
  2. セカンド中野拓夢
  3. ライト森下翔太
  4. ファースト大山悠輔
  5. サード佐藤輝明
  6. レフト前川右京
  7. キャッチャー梅野隆太郎
  8. ショート木浪聖也
  9. ピッチャー西勇輝

 このうち先述の2019年9月15日のゲームに出場していたのは、近本・大山・梅野・木浪の4名。西も移籍1年目にしてエースとして活躍していたし、ベンチに控える原口、熊谷、植田、坂本や、守護神・岩崎優もあの頃からのメンバーだ。彼らは単に主力であるだけではない。かつて地獄と称される屈辱を味わったもの、ミラクルとされる痺れる展開をかいくぐってきたもの。そして頂への険しさと、喜びを知るもの―。

 

破壊力過ぎるマシンガン打線

 ただ、相手が強そうなのは言うまでもなかった。横浜は、2番に牧秀悟、3番佐野恵太、4番タイラー・オースティン、5番宮崎敏郎、6番筒香嘉智と、見るからに全部を破壊しそうな重量打線が揃っていた。

 懸念材料はあった。

 この前日―9月19日、東京ドームで横浜は讀賣・戸郷翔征に抑え込まれ、零封負けを喫した*1。特に主砲・オースティンが3三振を喫するなど中軸が不発だった一方、牧は3安打と気を吐いた。好調の牧は当然、脅威。だが、

「うちに鬱憤ぶつけるんだろうなあ」

 阪神ご自慢のオースティンのことである。横浜ファンの友人にデータを見せてもらったら、9月20日時点で、

「1シーズン600打席換算値で、通算.349、62本塁打、154打点、OPS1.228

 頭がおかしいと言える。ソースがどこなのか知らないが、ともあれ阪神ご自慢どころか虎に親を〇されたかのような恨みっぷりである。

 対するこちらとて、5連勝中。もっともあるのは連勝の「勢い」というよりは、もう一つも負けられないという「執念」。確かに「何だか荒れるかも」という不安は、どこかにはある。

 

GOZE ON~さあ行こう、最後の勝利へ向かって~

 ただ、負ける気はしなかった。負けるわけにはいかなかった。

 スタメン発表時、まだ空席の目立つライトスタンドと、既に気合を通り越して殺気立っているレフトスタンド。生涯初となるハマスタの、ウィングの急傾斜にびびり散らかしながらも、何なら新潟から出てくる前の新幹線で腹をぶっ壊しながらも、この運命を分けるかもしれない一戦に立ち会う虎キチとして、声援を送る。

ビールは飲む(ベイスターズラガーだったかな)

餃子も食う(うまかったけどもう一品食えばよかった)

 もう僕も「憧れの野球場を楽しみに来た」ファンではないし、「プロの凄いプレーを観に来た野球少年」でもない。ただ猛虎の勝利を渇望し、歓喜六甲颪を叫ぶ―そういう「虎党」だと覚悟している。

 ところが……。

 

連日の虎虐め

 先発・西は2回、元同僚・伊藤光にタイムリーを許し2失点。さらに3回、先頭の牧、佐野と連続安打で無死一・三塁とピンチを招く。打席には、

阪神ご自慢のオースティン……」

讀賣アシストやめてクレメンス

 阪神からすれば、横浜には昨日、是が非でも勝っていただきたかった。宿敵・讀賣だから、というだけではない。その讀賣が今、首位なのだ。それを何ゲーム差かで追っているのが、今年の阪神である。横浜にしてみても「昨日は勝たなくてはいけなかった」と友人は言ったが、阪神にとってはもし横浜が勝っていたなら、試合をせずにゲーム差を詰められた。それが結果は大敗―逆に移動している間、兎の背中は遠のいた格好である。

 その横浜は、阪神をアシストするどころか、今日は阪神を攻め立てて叩こうとしている。実に、何なら讀賣以上に憎たらしい存在に成長してくれたものだが、ともあれ無死一・三塁のいま、理想は三振か内野フライ、それか1点くれてもゴロ併殺なら……という感じだが、いずれにしたってアウトを取らないことには、この流れは断ち切れない。

阪神ご自慢の……

 バッテリーの思惑もそうだったのだろう、スライダー、スライダー、チェンジアップと丁寧に攻めたが、カウントは2ボール1ストライク。遠いボールを意識した、と判断してだろうか。4球目、内角を突いた140キロのシュートは……。

 ≪カキーン!!!≫

「あっ……(絶句)」

 行くな、行くな、越えるな……。

 

 願いは通じず、打球はバックスクリーン左へ吸い込まれた。

「タイラー・オースティン、第24号3ランホームラン!!!!」

 

今日、戦場にいる阪神ファンとして

 3裏無死にして0対5というビハインドを背負ったところで、西は降板。代わった2番手・富田蓮が後続を打ち取るも、数字以上に重苦しい空気が……。

三塁もレフトスタンドも気合十分だ

 漂った、とは認めたくなかった。

 諦められなかったし、諦めたくなかったのだ。

 ここで負けてシーズンが事実上終わることも、これから先また僕と野球場、僕と阪神タイガースとの間に空白ができることも嫌だった。後者は何もチケットと休日さえ確保すれば行けるのかもしれないが、そういうことではない。

「スタンドを埋める阪神ファン」として、「戦場にいる者」として、できることもするべきことも、たった一つなのである。

 

行くしかねえ

 直後の4回表、先頭の森下翔太が死球を受け、出塁。

 レフトスタンドの声が怒気を帯びたのは、言うまでもない。直後の大山悠輔が安打で、無死1・2塁。ビハインドなんぞ、ホームランなんぞ、順位なんぞ、知らない。行ける。いや。

「行くしかねえ

 

≪カキーン!!!≫「右京ライト前にタイムリーヒット!!」

≪カキーン!!!≫「梅野ショートゴロの間に2点目!!」

≪カキーン!!!≫「木浪センター前にタイムリーヒット!!」

≪カキーン!!!≫「代打井上レフト線へヒット!!」

 あれよあれよという間に、3対5と詰め寄る。点を取られた直後の反撃。数年前、発展途上で他球団にどこか気圧され気味だった、あの日の姿ではない。……いや、今年はそんな節もあったかもしれない。もっと早く、具体的には3ヶ月くらい早く、そして3イニングくらい早くからこんな姿を見たかったものだが、そんなことは気にしていられない。もう1点ずつ返し、1点多く取り、1点少なく守る。そして、1つ多く勝って、1つ上の順位へ上がる。

 

やることはシンプル

 やることは実にシンプル。それは、

≪カキーン!!!≫「近本レフト線へタイムリーヒット!!」

「これで4対5!!1点差!!!!!!」

 全国の虎キチ共と、彼らを代表して今日のハマスタに詰めかけた虎キチ共にとっても、大差ないのだと思う。

 

六甲おろしに颯爽と\ソーレイケイケ!/蒼天翔けるゥ⤴︎日輪のww青春の覇気イィw⤴︎麗しくww輝く我が名ぞ阪神\ハンシーン/タイガース\タイガース/」

オウオウオウオウ阪神タイガァァァースwwフレェェフレフレフレェェェwwwバンザーイ!\(^o^)/バンザーイ!\(^o^)/」

 これで試合が分からなくなった。

 

あと1点、あと1本、あと1歩……

 だが、後から考えると、ここであと1点差を追いつけなかったことがこの試合の、そして今年の最終結果だった。結局、1点差だろうと1ゲーム差だろうと、下回ったら、届かなかったら、それは負けなのである。

4表は逆転するべき勝負のイニング

 代打・井上は起用に応えレフト線にヒットを放ったが、長打コースに見えたが1塁でストップ。微妙なタイミングにはなっていたかもしれない。だが、もし2塁に到達出来ていたら、近本の安打は2点適時打になり、同点となっていた。一概に、ミス、と断じるのは酷だろう。ロングリリーフ想定の富田の代打であった、と考えると、際どいタイミングを攻める判断になるべきではあった……というのは、後からなら何とでも言える。

 そして4対5でなおも2死1・3塁となったところで、2番・中野拓夢が中飛に倒れ、攻撃終了。どう考えても「良い」イニングだったのは間違いない。だがこの試合、中野は全5打席凡退したうち、4度が3アウト目の打者であった。イコール、3番・森下は5打席中4度が先頭打者。本来なら得点機で回すべき打者に、ランナー無しで回してしまっていた。

点を取った後、取られた後

 長いイニングを想定して送られた2番手・富田だったが、ここで継投に入らざるを得なかったのも響いた。余計に、ひっくり返すべきだったし、直後の3番手・島本浩也は絶対に失点してはならなかった前日が休養日だったからまだよかったものの、セットアッパーの石井大智を5回で起用せざるを得なくなった。8回に桐敷拓馬を7番手としてマウンドへ送ったとき、ブルペンにはハビー・ゲラと岩崎優、ストッパーを担う2人しか残されていなかった。

 考えてみれば、去年だって決して”余裕”であんなことになったわけではない。むしろああいう展開と、ああいう局面の中で、わずかに上回り、わずかに逃げ切り、わずかにアレだった、それだけだ。

 4回表に1点差まで詰め寄ったものの、今度は「点を取った後」のマウンドを任された3番手・島本は、代打・東妻純平にプロ初安打となる*2適時打を献上。傾きかけた流れは、再び大きくライト側―横浜に戻されることになった。

 

勝ち切る覚悟

 直後の5回表、今度は2死1・2塁から梅野隆太郎がライト前に適時打を放ち、再び虎が反撃。逃げる横浜に、必死に喰らい付く虎。誰も諦めていなかったし、誰もが「行くしかない」「やるしかない」と思っていたはずだ。”負けてもいいゲーム”を戦っていたものは、いなかったはずだ。”勝ち切る覚悟”とは、両者が問われていたはずだ。

されば港の数多かれど……

 だが、7回裏……。

 

≪カキーン!!!≫「宮崎、ライトへタイムリー2ベースヒット!!」

≪カキーン!!!≫筒香、右中間に7号2ランホームラン!!」

「……」

 

 言葉を失った。何かを言おうとしてやめたのか、はたまた意志とは関係のない筋肉の動きだったのか。何か、は言おうとしたと思う。

 ……何でストレートを投げなかった?*3

 ……何で先発で結果を残し、安定して白星を期待できるビーズリー*4、青柳晃洋を昇格させてまで中継ぎ待機させた?

 言おうとしても、無駄だと分かったのか。それともこれも、結果論だからか。イニングを跨いで続投した5番手、ジェレミービーズリーの、この日38球目―139kmのカットボールを捉えた、筒香嘉智の、横浜の夜空へ消えた放物線を見送った時。

 僕の口は、ぽかん、と開いたまま、しばらく動けなかった。

 ブォーン、と船の警笛が高らかに、存在を誇示するように、響く。この巨大にして光り輝く豊かな港・横浜に、他のどの港が勝ろうか、というかのようである。

 

決着

 そして9回。

 2死から、前川右京がこの日4安打目となるタイムリーで、1点を返す。まだいける、いや、いかなければならない。

 絶対にあきらめない。

 ハーフスイングしても、審判がスイングとコールしてアウトが成立するまで、逆転を信じる。この日に立ち会う虎党として、それが努めなのだ―。

「気迫のスイング 燃えろよ梅野 どでかいアーチ 勝利への一撃!!」

 ……。

baseball.yahoo.co.jp

あと一本だった

 守護神・森原康平の24球目・137kmのフォークに、梅野隆太郎のバットは回ってしまった。

 叫びはあと一歩、届かなかった。

 

 6対9。

 阪神の連勝は5でストップ。この日首位・讀賣は広島に勝ったため、ゲーム差がさらに開いた。

 一方の横浜は広島を追い抜き、3位に浮上。暗転して、ど真ん中で誇らしげに花火を打ち上げるスタジアムを、僕は三塁ウィングからじっと見つめていた。

 

「楽しい東京旅行」に行ったのではない

 翌日。

マスコロ「捕食するぞ」スターマン「シー行くんかと思った」 -2024.9.21

バグったスコアボード -2024.9.21

浦安でディズニーウキウキの若者を横目に、強風の中でオイシックスのロッテ戦を観に行き、奇しくも9失点で負けた。遠征は1人2連敗という何とも無様且つ疫病神な結果に終わったが、まあ、

「2日連続で野球観れてよかったね!」

「打ち合いで好ゲーム見れて羨ましい!」

「東京楽しかった?」

 まあ天候にも恵まれて、わりと楽

この日の屈辱を忘れはしまい -2024.9.20

 楽しかった、というわけがない。

 

 

3.それもまた、普通やんか

 

あの試合もシーズンも「あと1つ」を上回れなかった阪神

 阪神はこの後、9月21日の同カードで佐藤輝明が決勝ソロを放ち勝利。9月22日は甲子園に戻り、巨人との首位攻防ラウンド。才木浩人の好投(と半分虎パイアのおかげ)で1点差を守り勝利。しかし、連勝がマストだった23日は、逆に0対1で負け。マツダスタジアムでも接戦を勝ちきれず*5、とうとう宿敵のマジックは1になった。

 そして9月28日(土)、讀賣セ・リーグ優勝。

 同日に神宮ヤクルト戦で2対7と完敗した阪神の、「球団史上初のリーグ連覇」の夢が途絶えた瞬間だった。

 

 阪神はそれでもシーズンを2位通過し、クライマックスシリーズへと駒を進めることが出来た。同時に岡田彰布の退任が発表され、その野球の「集大成」を期待した。

 だが結果は、奇しくも3位通過してきた横浜に、2連敗で敗退。

「球団史上初、二年連続の日本一」の夢も消えた。

 

横浜も讀賣もどちらも強かった、それだけ

 勝ち上がった横浜は、東京ドームでリーグ覇者・讀賣にいきなり3連勝。その後は反撃を許すも、最終第6戦では死闘の末、1点差で勝利。日本シリーズへ進出すると、鷹も撃破。下剋上で日本一に輝き、正真正銘の”横浜優勝”。番長・三浦大輔は横浜の夜空に舞った。牧秀悟や佐野恵太、オースティンなど破壊力に満ちた野球をするようで、CSでは投手陣も安定。復帰した筒香嘉智は「精神的支柱」としてだけでなく、シーズンでは7本塁打・23打点をマークすると、日本シリーズでも本塁打を放った。

 リーグ覇者・讀賣も、隙が無く、1点を死に物狂いで奪い、死に物狂いで守る野球を展開。驕りも盟主のプライドもなく、あるのは勝利への執念であった。守護神・大勢の復帰や、菅野智之の貫禄の投球も光った。特に菅野は9月22日、1点に泣いたものの完投したことで、結果翌日にリリーフを投入できる環境を作ったのが大きかった。

 この2球団のどちらがどうだ、みたいな議論は、Twitterでもなされたように見受けられる。確かにCS制度の是非とやらは、問いたい気持ちもなくはない。そしてセントラル・リーグの覇者は讀賣巨人軍だが、かと言って日本一は横浜DeNAベイスターズだ。ゆえに「優勝したと言えるのか?」とベイファンが悩む必要も、ない。

 

 一つだけ言えるのは、リーグ優勝は讀賣と争い、プレーオフは横浜と争った。そして、やっぱり、何にも残らなかかった。冒頭にも書いた通り、最後は、

讀賣にも横浜にも、阪神は負けた」

 のである。

 

順番を間違えた

 岡田は最後、「順番を間違えただけ」と言った。

とにかく、うまくいかなかった

 確かにそうである。2023年、まあ言ってみれば「うまくいきすぎた」節はあったかもしれない。且つ、うまくいったから、今年はうまくいかなかったのだ。四球の査定を上げるようにしたら、後ろのバッターに繋いだり、ボール球を振らない意識が芽生えた。それが他球団に研究されたのか?ファーストストライクを簡単に見逃し、結果難しい球を打たされた……。

 クリーンアップが不振で全員二軍降格を味わったり、助っ人が不発だったり、投手陣もブルペンとベンチの連携がうまくいかず、勝ちゲームをひっくり返されたことも何度かあったり……。去年噛み合っていたはずの歯車が、なかなか噛み合わず、もどかしい1年になった。

多分「普通」にやっていて、そうなった

 そんな中で、如何せんネットに上がってくる言葉が、何と言うか……足りなさ過ぎて、しばしば僕も含め、周囲はその真意を理解できない。言葉通りなのか、突き放すようで実は裏でフォローされているのか。「普通の野球」とやらは、結局のところ何だったのか。二軍で結果を残していた中川勇人や遠藤成*6を差し置いて、打撃不振を極める中野や梅野を延々と起用し続けることが?継投ミスをブルペンコーチのせいにしたり、本塁突入を狙った三塁コーチの判断をメディアを通して糾弾することが?……その疑問符は、「考えがあるのだ」「ファンなら信じて応援しろ!」という至極真っ当な声により、封じられた。

 そう、きっと考えはあったのである。

 それが裏目に出るか、ボタンの掛け違いで不発に終わったか。よく考えれば、あとは「相手が上回る」のか「少ない確率でやっとうまくいく」かである。よく考えれば、それこそ「野球」ではないか。それこそ、このスポーツの難しさであり、この戦いの厳しさなのである。そしてあとにこういう結果だけが残った以上、他はもう何も残らない。

 ただ、あれなだけである。

 

勝手にあれを見て、勝手にそういう風になるだけ

 それは、勝っても負けても阪神タイガースに振り回される、虎キチも同じことだ。

5月には二軍戦でサトテルを観た -2024.5.30

 実質5年ぶりに阪神の試合を現地で見た。そこに「いい試合で楽しい」とか「プロのプレーが凄い」とか、そういう感想はもう、ない。

おれは岡田と強い阪神を見た

 いや、あるにはあった。5月に新潟に二軍戦が来て、何故かサトテルがいて複雑な気分になったけど、やっぱりサトテルは凄い、ってなった。ハマスタでも、打撃練習で軽々とスタンドへ放り込む原口や渡邊諒を見て、また遠目でもデカいと分かる大山を見て「凄えなあ」って思った。

 親父が少年だった頃の強い阪神の主力で、僕が小学生の頃強い阪神を率いていた岡田彰布を、今年は遠目だけど、確かに観た。凄えなあ、って思った。

 縦縞を着た監督・岡田を、確かに僕は観た。去年は虎を頂点に導き、今年も夢を見せてくれた。岡田彰布は凄いし、監督・岡田の率いるタイガースは、確かに強かった、と言っていいだろう。僕は言うことにする。去年栄光を手にし、宙に舞った岡田の姿はこの先、虎キチの記憶から消え去ることはない。そして、もう一度見れると信じたから、諦めたくなかったのだ。

 だが。……いや、だから、だろうか。

 

勝っても負けても勝手に命

  タイガースが負けたら、死ぬほど悔しい。死ぬほど悔しい中で見た、ハマスタの花火。ムカつくほど綺麗で、綺麗すぎてムカついた。なんでタイガースが負けたことが、あんな綺麗な花火とか、一見野球に関係なさそうなイベントに繋がるんだ。とにかく、悔しい。

輝く我が名ぞ阪神タイガース -2024.5.30

 タイガースが勝ったら、嬉しい。二軍戦でもオープン戦でも、ほんで僕の人生には1ミリの関係がなくとも、嬉しいものは嬉しいのだ。

 そして勝って周りの虎キチと喜びを交わし、叫ぶ六甲颪が、一番幸せだ。そして勝手に喜んで勝手に落ち込んで、勝手に戦って、勝利に燃ゆる栄冠とやらを今日も追いかけている。

多分当面はそうやろなあ -2024.5.30

 結局それだけのことやんか。はっきり言うて。

 

 末筆ながら、僕にアレをあれしてくれた岡田彰布監督に、心からの「本当にお疲れ様でした、ありがとうございました」を申し上げたい。

 

 

4.おまけ

観戦振り返り

  • 5/30(木) エコスタ 新潟2-9阪神(二軍);上述の通り、二軍降格中だった佐藤輝明が遠征に帯同。応援ニキは不在だったが、テルの打席だけは大合唱……という、二重の意味でなんだかなあ……と思う光景だったが、9回にタイムリー3塁打を放つなど2安打でスタンド拍手喝采。この日は井上広大もレフトへ豪快な3ランをかっ飛ばしたほか、先発の帝京長岡高出身・茨木秀俊が6回1失点と好投し勝利投手。平日デーゲームにも関わらずエコスタに詰めかけた2000人ちょいのスタンドを沸かせた。
  • 9/20(金) ハマスタ 横浜9-6阪神;上述の通り。

 

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 まとめ・振り返り記事だとどうしても分量長くなるので悩み中

 

 

*1:2024年9月19日 読売ジャイアンツvs.横浜DeNAベイスターズ - プロ野球 - スポーツナビ

*2:DeNA、東妻純平が値千金の適時打 代打でプロ初打席「結果残せた」 9月20日・阪神戦 | カナロコ by 神奈川新聞

*3:筒香は150kmオーバーの速球には弱い、という言説があったため。本塁打にされたような130~140km台の変化の少ないボールは、ちょうど打ち頃のボールだったのかもしれない。

*4:前回登板となった9月15日のヤクルト戦では、6回を散髪2安打1失点にまとめ勝利投手。最終的には13試合の先発で8勝3敗、防御率2.47をマークした。ビーズリー - 阪神タイガース - プロ野球 - スポーツナビ

*5:終盤一打勝ち越しの場面で、代打に原口文仁ではなく梅野を起用し、結果凡退。さらには先発ローテの軸である村上頌樹を中継ぎ登板させ、結果サヨナラ負け。多くの虎キチの「?」を誘ったのは間違いないだろう。

*6:エスタン最高出塁率のタイトルを獲得するも、オフに戦力外→オリックス移籍の報道あり。