2024年。此処・新潟に輝いた、激アツで芸術的で、美味しく美しい、素晴らしい「やきうの時間」であった。
※更にクソ長いので飛ばし推奨(15000字になってもた……)
0.前回振り返り
「おれも次は一塁側で、オレンジのサポーターと一緒に戦いたい」
「ならば捕食だ」
寒空の中で野球ファンに夢と「また来たい」という期待や希望を与えた、3月23日のホーム開幕戦。ファンの持つチカラ、応援の持つチカラを確信し、同時に熱すぎるシーソーゲームの中で微妙なモヤモヤだけを抱えた、4月6日のヤクルト戦。相棒・マスコロと兄弟喧嘩を宣言した、4月27日のロッテ戦。
あくまでも「観に来ているだけのただの野球ファン」だっただけの僕らは、オイシックス新潟アルビレックスBCという野球チームに引き寄せられるように、5月も球場へ行く―。
- 0.前回振り返り
- 1.ホームで最強(?)の球団がビジターで2割も勝てない?明らかに○○じゃねーか
- 2.声は届く?~ホームに強いワケ~
- 3.聳え立つ壁
- 4.総括?~壁の向こうには栄光が、栄冠が~
- 5.おまけ
1.ホームで最強(?)の球団がビジターで2割も勝てない?明らかに○○じゃねーか
イースタンに参入後、最初の3・4月を終えたアルビBC。レギュラーシーズンで27?試合を戦い、週末のエコスタはそれなりに賑わい、ほとんど一軍クラス……はおろか日本代表クラスまでも打ち砕く活躍で、中々に健闘……どころか、
「普通に強くね?」
と思っていたが……。
3・4月の戦績は10勝16敗1分け。
移動は鍛錬?(目指せグリーン車)
特にビジターゲームでは、4月30日横須賀スタジアムでDeNAに勝利したのみで、4月16~21日のビジター6連戦では全敗を喫してしまうなど苦戦。この傾向はシーズン通しても続き、
ビジターでは62試合中8勝。ちなみにホーム戦では33勝28敗3分けと、5割の勝率を誇った。
ホームで最強、とは言えないものの、ビジターでは半分どころか2割も勝てなかったことになり、かの渡久地東亜さんもびっくり課題を残す結果にはなった。尤も、
- ほとんどがバスになっているという移動手段*1
- それに伴う移動時間
- イコールそうせざるを得ない経済面
......というのが、チームというよりは球団の課題になっている、と言うべきだろうか。とにもかくにも渡久地の言うような「明らかな異常」ではないことは証明されたが、青いビジユニはかっこいいので、もう少し勝ってほしい。ついでに「明らかな異常」とは2024年のアルビBCではなく、2018年頃の某球団を言うのである。
ホームに強い理由
一方、ホーム戦では勝率5割。
新潟球団はいちおう球団事務所をハードオフエコスタジアムに置くが、そこだけが”本拠地”というわけではない。ファン的には長岡悠久山球場が”ホーム”のようだ、という感じらしいし、他は三条パール金属スタジアム、柏崎佐藤池球場、新潟みどりと森の運動公園野球場、南魚沼ベーマガスタジアム……と、今季ホーム戦は計6球場で開催された。広い新潟県内を新潟市中央区~南魚沼市と転々とするのは、BCL時代より続く地方創生的な意味合いも含まれるようである。
そんなホーム戦に強かったことの要因として、こんな声が上がったらしい。
㊗️㊗️㊗️の長岡3連勝!🎆🎇
— 白石夏輝@オイシックス新潟アルビレックスBC 企画部長🦢⚾️ (@natsukiws) 2024年5月26日
これでホーム戦績は、17勝10敗1分で、
勝率は6割超え!
※ビジターは2勝16敗2分
ホームで驚くほど強いんです😂🙌✨
ここで、おとといの夜に起こった
嘘のように綺麗だけど本当の話を1つ。
野球にそこまで詳しくない私は、… https://t.co/nx1DnV6XJJ pic.twitter.com/luLhdWqWmw
「応援じゃないですか?」
2.声は届く?~ホームに強いワケ~
ファンの応援があるから、力になる―。
グラウンドに出ている選手間でも、そう思うものなのだろうか?
声は”力”になるのか
確かにホーム開幕戦や4月のヤクルト戦で、ああいうミラクルを見て、ファンとしてはそう思った。正確に言えば、そう思いたかった。もっと正確に言えば、そう思ったとして、選手に届けようとして、勝とうとして、叫んだとて、戦って勝つのは選手たちなのだ。
時には重圧になる
確かに本当はそうなのかもしれない。何なら、大声援は特に重圧となり、押しつぶされる選手だっているのだろう。書いている今ですら、応援なんぞ結局はファンの自己満足だろう、と思わなくもない。一方で声の主―田中俊太(元巨人~横浜DeNA)は「ビジターでは静かだが、声援の聞こえるホームでは雰囲気が違う」と言ったそうだ。
よく他の選手たちも「声援が力になった」「ファンの皆さんの応援のおかげで」と言う。勿論ファンを喜ばせるためのサービスに過ぎない、とは思う。実際のところはわからない。
ただ一方では、応援や歓声をモチベーションに頑張れる選手がいるなら、対戦チームにプレッシャーを与えられるなら、とも思う。
2023年秋の”カンガルークラブ”は強かった
何より、僕なら応援されたらやる気は出る。また、相手チームに凄まじい応援団がいると、何故だかとんでもない強いチームと感じてしまう。小6の学童大会、保護者による熱心な応援は、相手チームのただでさえデカくて打ちそうな選手たちを一層大きく、強層に見せた。一瞬の隙も見せられない、一本のヒットから流れが行ってしまう―そんなプレッシャーがあった。
昨年のアジアチャンピオンシップ、1チームだけチア・応援団がいなかったオーストラリア代表が、日本のファンによる応援を求める発信を行った。すると熱心なファンが応え、声の波紋は東京ドームに広がった。オーストラリア代表は見事に有志の声を力に変え、敗れはしたものの中盤反撃し同点に追いつく、という事例もあった。
応援はやはり、戦力なのである。上記の事例なんぞ何の根拠にもならないし、今年に限って言えば(主に二軍戦で)あれこれ懐疑的・批判的な意見も見られた。だが僕は「二軍の帝王」は支持するし、欲を言うなら贔屓や地元の同志に加わり、あるいは僕の応援すらしてほしいなあ、とすら思う。応援歌は高山か北條でお願いしたい。
意味なんてなくても
何より、
仮に「意味がない」と思っていたとして、もう後戻りはできなかったし、するつもりもなかった。
一度あの大声援のど真ん中にいて、同じ願いを叫び、喜びを共有する、その喜びを知ってしまったから。
一軍でも主力級とされるような兵を擁する敵を相手に、一歩も引かぬシーソーゲームを見せられたから。
時にずぶ濡れになりながら、時に灼熱に干上がりそうになりながら、
時に強風に煽られながら。
そんな雨・風・灼熱にも負けず、このチーム・ここの選手を追いかけてくる、サポーターの熱にうたれたら。
そんな彼らと声を、力を合わせ、喜びを分かち合うことを知ったから。
ここのみんなも野球が好きだ
8月、みどり森にロッテが再びやってきた。だが僕は4月末とは反対側のスタンドーアルビBCサポのど真ん中にいた。宣言通り、マスコロに喧嘩を吹っかけたのである。
ファンは兼任も多い(中日47もDeNA61も紫の高山タオルもある)
ちなみにこの謎の魚、一塁スタンドにおいては文字通り謎……ですらなかったかもしれない。こいつが魚であると認識していた人も、果たしてあの場に何人いただろう。おかげでこいつが物理的に鱗を剝がされるとか、提燈を捥ぎ取られる、ということは起きなかった。
何なら7月末の巨人戦、全く関係ない中日やDeNAのユニを着た*2人もいたし、正直なんでもあり、である。真面目(?)にアルビBCのユニを着用している人も、勿論BCL時代からのサポーターや、オイシックス球団になってからの純サポーターもいるだろう。一方、球団の特性上、僕のように普段は他に贔屓のNPB球団があるが、純粋に野球観戦をしたかったとか、あるいは推し選手の移籍先になっていたとか、背景は様々だろう。
各地から飛んで来る勢、各地へ飛んでいく勢
それにしても他のサポーター、
「今季60試合くらい行ったかも」
「明日の横須賀どうする?」
(か、勝てねえ……)
強すぎるのだ。
何ならビジター球場に行くのを、近所の飯屋かコンビニに行くくらいの感覚で語っている気がしてしまう。後述するが、こちとら頑張っても16試合だったのだ。ビジターは浦安の1試合に行っただけで、ホーム戦ですら長岡・柏崎には中々足が向かなかった。
地元民がホーム戦に行くのすらひいひい言っているくらいだが、たまに他県から訪れるアルビBCサポもいた。「あの人毎週いるよね」とか言ったら、「でも今○○(他県)に住んでるらしいよ」とか返ってくる。何か遠いところだと愛知から、それも高頻度で飛んできていた人もいたとか……。
後悔したくない ~推せる今推せ~
ひとえにこれらは”推し活”のチカラであろう。単に「好き」という理由だけでないことが、この1年でようやくわかった気がする。
後悔したくないのである。
現に僕も昨2023年までの間、虎キチでありながら、球場から足が遠のいたと書いた。その観に行けなかった間に、辞めていった選手もいた。また「落ち着いたら」「次の機会」を待てばいい―例の疫病禍に嫌と言うほど聞かされた文句だが、”推し活”には通用しない。
推し活のチカラ、と書いたが、より正しくは「使命感」、あるいは「恐怖感」かもしれない。後述するが、心半ばでユニフォームを脱ぐ選手は、どの球団にも毎年いる。特に球団の性質上かもしれないが、若く発展途上の選手ですら、グラウンドからも去る決断をした者もいた。フレッシュ球宴に出場した小池智也は、元NPB戦士が多く在籍する中で中軸としてチームを牽引した。速球派サイドスロー・前川哲は、引退試合で150キロに迫る直球で、見事打者一人を三振に斬った。
「推しは推せるときに推せ」
こんなワードを目にすることがある。
いつでも見に行けるから、まだやれるから―だからまだ(現地に行ったりグッズを買ったりしなくても)大丈夫、という思考でいると、ある日突然その時は来てしまう。解散します、引退します、置き換えます、……そんな知らせが来てからでは、もう時間はない。
前川哲の場合、引退試合の前日夜に引退発表がされたし、小池やベテラン・稲葉大樹に至っては、シーズン終了後の発表だった。特に小池は「どこか社会人や海外リーグからのお誘いかな」とばかり思っていたら、程なくして本人のSNSで引退発表がされる、という流れだった。果たして、事前に予想したサポーターは、どの程度いただろう。
こういうのが”突然に”起こる。野球以外とて、何なら乗り物でもある。その時になって慌てたり、後悔したくない……。
他県から、あるいは他県へ―どこまでも選手たちと共に戦おうとするサポーターには、おそらくは選手たちと同じような「今しかない」の想いがあるのだろう。そういう姿にも心打たれる一年だった。
3.聳え立つ壁
それにしても、対戦球団の面子である。
安田が打つ、石川が投げる、秋広がいる
8月10日のロッテ戦、向こうの2番は山口航輝、5番は安田尚憲、6番は井上晴哉だった。
「いやおかしいだろ」
「こっちの台詞だよ」
考えてみれば、4月のヤクルト戦では8回に田口麗斗が登板したし、9月には清水昇・石川雅規・小川泰弘を投げさせた。5月11日の日ハム戦では3番を清宮幸太郎が打っていた。7月末の巨人戦では重信・中山・秋広・萩尾。西武・栗山巧や、DeNA・濱口遥大など……。
「みんな嫌がらせに来たのか?」
どう考えても一軍、それも主力クラスの選手が出場しているのだ。尤も「対オイシックス」の為にわざわざ二軍遠征に帯同させるようなことはしないだろう。相手チームにとっては、多くが調子を落とした、怪我明け、選手層が厚すぎてor実力及ばずor干されて出場機会がない、などの理由から、一軍の試合に出られない選手の調整や鍛錬の場だ。
新潟と「プロ野球」の距離は近い
それでも、”12球団”からのドラフト指名や返り咲きを狙う新潟の選手たちにとって、「NPB」のなんたるかを知る選手たちと対戦できるのは、この上ない機会なはずだ。同時に、ファンにとっても(複雑かもしれないが)やはりTVで見たことがあるような選手を球場で目にする、というのは嬉しいし、そのプレーや放つオーラには「すげえ」となるものである。
後述する(かもしれない)が、この「オイシックス新潟がNPBファーム参入」という試みがもたらしたものとして、例えば僕のような地方在住の他球団ファンに、贔屓球団の応援や野球観戦文化を身近した、ということが挙げられる。それは贔屓球団がビジターチームとなることであり、(複雑だけど)その主力や推し選手を近くで見れることである。
選ばれた者
安田や山口航輝に対し、「2024年のレギュラーシーズンで本塁打ゼロだった」と嘆くロッテファンのコメントが、Twitterを見ていると散見された。僕からすると、
「いや打っとるやん」
と言いたい。本来ここにいるべきではない選手だと、頭では分かっているが、凄いものは凄い。その貫禄を散々見せつけられている僕からすると、あれ以上に何が要るのか?と問いたくなる。だが、そんなものではないだろう、と期待するのも、わかる。
あの日先頭打者初球HRを放った寺地隆成や、安田、山口だけではない。フェンスの向こうに立つ彼らはそういう「選ばれた者」なのだ。
彼らはその全てを野球に捧げ野球に生きる者たちであり、戦う者として選ばれてそこにいる。フェンスの向こうは戦場だと、いつか書いた。そこに立つ者が選ばれて、さらに選ばれて生き残る。そういう戦いである。だから凄いのだ。単に上手いから、パワーがあるから、デカいから?それだけではない。
「TVのあの選手」じゃなくて「敵」 ~グラウンドは戦場~
だが「選ばれた者」として戦うのは、アルビBCの選手たちも同様である。それは「戦える」ということであり、同時に「戦わねばならない」ということでもある。
同じフィールドで戦っているのでは、安田や寺地に感心している場合ではない。むしろオレンジナインにとっての彼らは「越えなくてはいけない」壁であり、倒さなくてはいけない敵である。
そういう姿をスカウト・首脳陣や対戦相手に届け、評価してもらう。これもNPB二軍参戦の意義ではある。だが同時に、それらはサポーターに対しても同様だ。土日デーゲームが1500円とはかなりお安めの値段設定だが、それでもチケットにグッズにお金を払って応援に駆け付けるサポーターに、届けるべき姿とは何なのか、それらは結局のところ「戦って勝つ」にすぎない。反対の姿を求めるファンはおらず、反対の結果にするためにプレーする選手もいない。興行(=仕事)だろうと趣味の草野球だろうと、グラウンドに立って負けるためにプレーする選手など、いないのである。
やるべきことは実にシンプル、且つ実に困難で、高い壁で、強大な力である。だが、彼らもそのグラウンドに立つまでに、幾数回と「選ばれて」きたわけだ。選ばれて、戦うことができる。故に、さらに「選ばれる」ために戦わなくてはならない。
乗り越えて夢舞台へ
オイシックス球団としての最初のトライアウトで、残念ながら不合格となった選手もいただろう。また、試合に出ることが出来なかったりする者もいた。
下川隼佑はヤクルト育成へ
この記事を書いている今、ドラフト会議が終わり、吉報が新潟県内にも届いた。サブマリン・下川隼佑が、ヤクルトに育成3位で指名されたのだ。
下川は先発・中継ぎと、あらゆる場面での起用に応え、アンダーハンドから威力のある直球で、イースタン最多奪三振のタイトルに輝いた。先述の秋広らを並べたほぼ一軍メンバーの巨人戦でも、下川はピンチの場面からの好救援、からのロングリリーフで白星に貢献。強打者相手に一歩も引かぬ投球を披露した。アンダースローながらコントロールもいい。とにかく打者はタイミングがとりづらいし、ボールの軌道に戸惑うだろう。育成指名だが、近い将来に神宮のマウンドで阪神の邪魔になるだろう躍動しているだろう。
ここでも”NPB”の壁 ~タイトルを取ったのに~
一方、指名されたのは下川ひとりだけだった。ウエスタンに参入したくふうハヤテも、投手の早川太貴が育成指名を受けただけで、2軍新規参入球団から1人ずつが指名、支配下は0、という結果だった。
驚いたのは、打率.323をマークした知念大成、セーブ王に輝いた上村知輝がいずれも指名漏れとなったことだ。
正直、2人は確実に抜けるだろう、と踏んでいた。知念の場合、本塁打の少なさと中堅守備の指標を気にする声はあった。それでも即戦力の欲しい球団は手を挙げるはず、と踏んでいたが、蓋を開けてみると独立Lや社会人からは多数指名があった一方、ファームでタイトルを獲得した選手に、NPBは門を開かなかった。
ファームリーグ拡大や、タイトルの価値に対する疑問は、当然ある。「プロ」と勝負できることを示すのに、これ以上はない勲章のはずだった。独立Lの指名選手が多かった、という事実と比較して、マイナスの言葉をどうしてもあてはめたくなってしまう。
なので、これ以上の言及は避ける。指名しろよ!活躍しただろう!というのは、どうしても贔屓……というより”身内”のコメントになってしまう。アルビBCサポとして言うなら、悔しい。だが、虎キチとして言うなら、いいドラフトだったとは思う。
ちなみにドラフト対象外組で言うと、吉田一将が台湾プロ野球・台鋼ホークスへ移籍したのと、くふうハヤテ・西濱勇星がシーズン終了後にヤクルトと育成契約を結んだが、他はNPB経験者の復帰はゼロだった。
無粋ながら、そういうことやんか、である。球団社長・池田拓史は「改めて壁を痛感した」と言った。そういうことなのである。
「ずっと見たい」も本心だけど……
それに、指名されたらされたで、寂しい。
モチベーションは「ここから出ていきたい」なのか
BCL時代からそうだったのかもしれないが、性質上この球団は「ゴール地点ではない」。選手がこぞって「NPBに行きたい、ドラフトで指名されたい」と言う。新潟でいえば、稲葉大樹という、BCL初期から新潟でプレーし続けてきたレジェンドはいる。しかし大抵の選手は、
「ここから出ていきたい」
と思ってプレーしていると、そういうことになってしまう。
NPBで、例えば支配下登録されて、一軍の主力で活躍する選手になれたなら……2軍参入している今季は現状を知らないが、独立Lとは圧倒的に桁の違うあれこれを享受することになる。
レベルは当然圧倒的に高く、常に球場は満員に近く、給料は高い。アルビBC戦で3800人入った試合があったとき、「おお今日はすげえ人だあ」とか思ったものだが、よくよく考えると6月のセ・リーグDeNA対巨人戦は2万6千人とか入ったのだ。
選手に「残留してくれ」は正しくない?
そう考えたら、なるほど、此処をゴールとするべきにはあらず、というのは理解できる。……頭ではわかっているが、やはり球場で”推し”の選手を見つけたときに、
「出て行ってほしくねえなあ」
と思うのは仕方ない。虎キチとして、FA流出が危惧される主力達に抱く感情とて、勿論同じである。一方、それを挑戦と呼び、あるいは栄誉と呼ぶのなら、それを止めることはできまい。
ずっと新潟で見ていたいのも、夢をかなえて欲しいのも本心。”推し”の選手といざ対面したとして、かけるべき言葉として適切なのは何だろう。「来年も残留してください」って、本当はよくなかったのかもしれない。濁った返答になったのは致し方あるまいが、ずっと応援したいから、という一心だと理解していただければ幸いである。
4.総括?~壁の向こうには栄光が、栄冠が~
そんなこんなでドラフトも終わり、生き残った者同士の〇し合いも終わり、激アツだった2024年シーズンは終わり、一気に気温は冷え、寂しくなった。
だから僕たちみんな野球場へ行こう!~地元・新潟で野球観戦を~
あくまでもこれは、僕がやきうに飢えているやきう民で、且つ地元をいまいち”楽しくない”と思っている節のある新潟県民、という前提のもと語られる総括だ。
地方にプロ野球文化を
先ほど、新潟球団のNPBファーム参入は、地方都市である此処・新潟にプロ野球という文化を提供した、と書いた。元々独立L時代より、野球の試合という興行を通じての地方創生を理念として掲げていた。
それは試合数が増えたことと、よりレベルの高いビジターチームや選手、及びそれらと対等に渡り合い、より高いレベルを目指すチーム・選手たちの戦い、という価値を、かなりの安価で提供した、といえる。僕はオレンジの嵐に呑み込まれたが、そうでなくても野球が見たいだけのファンにも、対戦するビジターファンにも、「新潟でプロ野球を!」という憧れを、叶えた、と言っていいだろう。
野球場はもっと身近に、気軽に
そう、チケット代も安かった。土日デーゲームで1500円、前売りなら1300円である。外野スタンド2000円が一般的な相場だと考える人間からすると、なんて良心的だろう、としか思わない。これでいて先述の通り1軍クラスがゴロゴロと出てくるし、1軍の試合では外野が6000円になる試合もあるし、つまり新潟球団最高やな、ってことである。ちなみに前編で触れたかもしれないが、後援会に入会するとグレードに合わせてタダ券を複数枚くれる。
エコスタのアルビBC戦では、だいたい土日なら2000人、多ければ3000人、平日なら1000人前後。他球場だとこれより少ない。2軍戦では健闘したといえる観客動員数を出したと言える。もっとも、僕としては前編でも触れた通り、逆にチケットが売り切れて球場に入れない、ということを危惧していた。
おかげで、気軽に当日券(orタダ券)で試合観戦が出来た。駐車場の心配をしなくてよかったのも非常にありがたかった。仕事帰りにナイターを観に行く憧れも、エコスタで叶った。当日に行くと決めて、ふらり、と球場へ寄ることもできた。
文字通りの「おいしさ」
球場といえば球場飯。
これがまた、うまかった。
どう考えてもふらりと立ち寄った球場でビールを呑み飯を食いながら、日和見で野球を観るなんぞ、至高の贅沢ではないか?もっとも移動手段を車にせざるを得ないケースがほとんどだったのと、後半からは応援で呑んでいる暇が意外とない、という理由から、球場の売店で何か買うことはあまりしなかった。
もうちょい余裕を持って楽しんでもよかったかな、とは思うのだが、まあ行列しない平日を狙いたいな、とは思う。如何せん、試合中に買いに行くと1イニング表裏を消化することもあるため、注意は必要だ。
写真を見返していて、セルフ飯テロになってしまった。豚串を喰らいながらビールをぐびっとやりたい。ちなみに球団の売店は美味かったが、たまに出店するほっともっとに浮気したことも1回だけあるのは内緒だ。
ギリギリまでネバーギブアップ!~新潟は戦える~
正直なところ「野球が観れれば……」なんて思っていたが、前述の通り主にホーム球場での善戦や、劇的な展開が目立った。
夢に向かって全力疾走~アピールしたNPB未経験組~
ドラフト指名された下川や、タイトルを獲得した知念、上村、フレッシュ球宴に出場した小池など、NPB未経験ながら「プロと戦える」という姿を示した選手が多くいた。
BC時代から在籍の主将・藤原大智は、内外野をこなす俊足好打のリードオフマンとしてチームを牽引した。4月ヤクルト戦で、チーム1号HRを放った片野優羽は、若くして打てる捕手の期待がかかる。残念ながら引退を表明したが、新潟出身の長距離砲・佐藤拓実はチームトップの5本塁打を飛ばした。
投手で言えば、右サイドハンドの西村陸は、セットアップからワンポイントなど幅広い役割で、リーグ最多となる62試合に登板。BCL時代のライバル・信濃から移籍してきた先発左腕・牧野憲伸は、リーグ最多となる11度のQSをマークした。伊禮海斗や内田健太は、貴重な中継ぎ左腕として活躍が光った。途中から合流した地元出身の先発・目黒宏也は、9月に150kmを記録しドラフト候補へと成長した。
貫禄?苦悩?~NPB経験者~
他方、薮田和樹(元広島)、中山翔太(元ヤクルト)、田中俊太(元巨人~DeNA)、小林慶祐(元オリックス~阪神)、三上朋也(元DeNA~巨人)、笠原祥太郎(元中日~DeNA)……などタレントを揃えた元NPB組は、随所に「流石だな」と感じるプレーを見せてくれたとは思う。しかし「こんなもんじゃないだろ」と感じたのも事実だった。
言うまでもなく、高山俊と、陽岱鋼である。やはり僕がどちらも「全盛期」を知っているだけに、あの頃のような姿を求めてしまうのは少々、酷ともいえよう。だが、陽は打率.232、1本塁打に終わるような選手ではないことは、おそらくファンの皆様のほうがよく分かっていることだろう。打率.282を記録した高山も、随所に「高山らしさ」を感じるバッティングは見れた。でも、だけど、だって……なのだ。もう、サポーターである以前に、虎キチとして、言いたいことは理解してほしいところである。
元オリックスの園部佳太は夏場以降復調し、勝負強いバッティングでポイントゲッターの役割を担った。だが結局、期限である7月31日までに、NPBに支配下として復帰した者はいなかった。前述したかもしれないが、BC新潟時代からのリリーフエース・吉田一将(元オリックス)が台湾リーグへ移籍したのを含めても、1名だけだ。
来年度、かえって下川の穴が気になるのは、球団の特性上仕方あるまい。ただ、下川に続けとNPB入り(あるいは返り咲き)を目指す選手が、新潟を挑戦の地に選んでくれることを願っている。今回指名漏れの悔しさを味わったのは、知念や上村などもそうだが、高校生や大学生にも多いことだろう。
NPBの”壁”にぶつかった選手たちが、この長き冬を乗り越え、再び羽ばたく姿に期待したい。監督・橋上秀樹は最終戦で訓示した―ユニフォームを着て野球をやれるのなんて一瞬だ。必死でやったってなかなかプロには行けないんだ。後悔してほしくない。佐藤拓実の応援歌は誰かに引き継いでもらい、可能性のある限り諦めない姿をファンに届け、そして壁に立ち向かっていってほしいと思う。
共に夢を信じよう、けれど全力で戦おう ~激アツなサポーターへ~
今年は選手の見せるプレー以外のところで、例えばNPBリーグ参入初年度を支え奮闘する運営であったり、身近で魅力あふれる野球場づくりであったりと、「またオイシックスの試合を見に行きたい」と思えるような球団の姿を感じた。
それは、選手と共に新潟の夢を、野球の夢を追いかけた、サポーターにも同様である。
ファンの存在とか、届ける声ー応援ってのは、やはり戦力だと僕は思う。勝手にそう信じていたいだけではあるし、応援があったから勝ったのだ、という試合は根拠になるか?といえば、そうではない。だが、特にホーム戦で見たような奇跡の数々を知っていると、やっぱりあるんじゃないのかな、って思う。
少なくとも僕は、同じくスタンドにいて、声を枯らし、手を叩き、どこからでも来て、どこまでも行くサポーターの姿に、何より今年は元気・勇気をもらってきた。それは橋上の訓示したような「今しかない」的なことが、ファンにとっても当てはまるからなのだ、と言えるだろう。
”推し”の選手はあと何年、グラウンドで見れるだろう?―勿論長く続けてもらいたいが、長く続けている選手は「明日終わるかもしれない」という修羅場を幾度も潜って来た猛者である。今なお戦い続けることが選手たちにとっての幸せなら、ファンにとっての幸せはそんな、もしかしたら明日はチームの存続すらも分からないような状況下で、”今日”野球場で会える喜びを分かち合い、”明日”を信じて応援することなのだと思う。ついでに言うなら、昔は「早くあれになりたい」という少年にとって、今は「負けたくない」あるいは「おれも他人事じゃない」という大人しくない大人にとっての、刺激である。
新潟には夢と希望にあふれた、激アツで楽しい、野球がある。
これから先もしばらくは「憧れ」のままだろう。身近になったからといって、これが日常とか、当たり前のものになるのか、と言われたら、そうではない。いくつになったって、試合前に同じユニフォームを着たファンを見たら昂るし、野球場のゲートを潜ってグラウンドが現れる瞬間は鳥肌が立つし、選手が現れる瞬間には感動するのだ。この先もいちいち感動することになるから、だから疲れるのである。で、やれ凡退した、失点した、負けた、と言ってやきもきし、打った、抑えた、勝った、で喜ぶ。
損な生き方か?そうかもしれない。というより、それはそうである。実にコスパが悪い趣味なので、おすすめするかと言われたら、しない。少なくとも「どこかの球団に肩入れする」なんてやめたほうがいい。
でも後戻りなんかする気はないし、できる気もしない。
「来季もこっちで戦うわ」
「よろしい、ならば今度こそ*3捕食だ」
次の春も、高く遠く羽ばたこうとする白鳥たちと、クレイジーなやきう民・新潟県民と共に行く、(特定の試合*4以外は)そういう所存である。
末筆ながら、オイシックス新潟アルビレックスBC、ならびに球団・球場関係者の皆様と、共に戦ったサポーターの皆様に、心からの「1年間お疲れ様でした、ありがとうございました」を申し上げたい。
また野球場で会いましょう。
5.おまけ
観戦振り返り
- 2024.3.23(土) エコスタ 新潟2-2楽天;ホーム開幕戦。詳細は前編を参照。寒かったが、熱かった。
- 4.7(土) エコスタ 新潟7-5ヤクルト;片野優羽のチーム1号、また田口麗斗を打っての勝利。序盤だからと言って、新規ファン獲得事業に熱心すぎないか?(なお、まんまと引っかかる模様)ちなみにこの日、7年?越しに「野球場でビールリベンジ」を果たす。かなりうまかったなあ。
- 4.27(土) みどり森 新潟0-2ロッテ;マスコロについて行った、というのは半分は建前で「ロッテもいいな」と思い始めていた頃である。熱心に「どこへでも行く」ことと、マリンの外野の熱量とはまた違った装いになるのかもしれない。ちなみに「アルビBCサポ」を名乗り始めてから”対戦”した8月は、ロッテ側にも応援ニキ*5が現れた。
- 5.11(土) エコスタ 新潟2-0日ハム;実績解除「仕事帰りに野球観戦」。薮田和樹、圧巻の投球。圧巻も何もあれが薮田なので、本来想定していた姿とはまだ遠い、と言うのは欲張りではないはずだ。ちなみにこれまた久方ぶりの再会(?)となった江越大賀はスタメン出場し、内野安打も放った。この時から応援歌を覚え始めた。
- 5.30(木) エコスタ 新潟2-9阪神
- 6.11(火) 三条パール 新潟1-5ソフトバンク;流石福岡ソフトバンク連邦軍……いや、新潟がよくぞ5点で留めた、というべきだろうか。ちなみに昨年もそうだったが、パールスタ然り三条・見附では大抵迷子になりがちである。
- 7.30(火) エコスタ 新潟3-9巨人;試合前に某大物草野球youtubeチャンネルがスタンドを歩いていて驚く。あとこの日限定なのかビールの売り子さんがいたが、クーラーボックスに缶を入れておくスタイルだった。
- 7.31(水) エコスタ 新潟5-3巨人;実績解除「二日連続現地」。「エコスタ」「ナイトゲーム」「日勤」の全部を満たす必要こそあるが、やはり仕事終わりに行くと決めて野球場へ行けることの、なんと贅沢かつ幸せなことだろう。
- 8.10(土) みどり森 新潟8-7ロッテ;宣言通りの兄弟喧嘩。今季の個人的ベストゲームはこれかもしれないが、おそらく同意見のサポーターも多いだろう。本来想定していた小西慶治の活躍に大興奮しながら、園部佳太に全てを持っていかれてなんか複雑だった(もちろん嬉しかったけど!)。上述の通り一軍主力級の相手にもシーソーゲームを演じ、最後に勝ち切った。それにしても寺地隆成、恐ろしい若者である。
- 8.24(土) 南魚沼ベーマガ 新潟6-8ロッテ;実績解除「現地観戦で雨天コールド」。ちょうど母(小西推し)に送ろうとして動画を回したらヒット、その次にはホームラン。良い動画を撮ってしもうたが、よくよく考えたら応援もする僕の汚い声も入っているので、いい具合に僕の音声だけ消せれば……という感じである。余談だが、佐藤池や悠久山には足が向かないのに、なんで推定140km離れているはずの魚沼には迷わず行こうと思ったのか。判断基準が謎過ぎるし、そもそもいい感じにドライブで楽しかったし、そもそもそんなことを言っている場合ではない。気合を入れるのが少し遅かったようである。
- 9.6(金) エコスタ 新潟4-4ヤクルト;ホームでビジユニデー。青がかっこいいのでまたやってほしい。逆に贔屓球団でほとんど見られない企画である。見習ってほしい。
- 9.13(金)~15(日) エコスタ巨人三連戦(13(金)新潟0-1巨人、14(土)新潟0-7巨人、15(日)新潟-巨人※中止);実績解除「同一カード3連戦全て現地」「現地観戦で入場後にノーゲーム」。9月なのに暑かった。この時期に34~5度だというから気が狂いそうになるし、この酷暑で冷温停止しながら揚げ物を製造し続ける*6打線にも気が狂うわけだが、前編で触れた通り、ありとあらゆる文句は特大のブーメランにしかならない。汗なのか雨なのかはともかく、びしょ濡れになって終わるのだ。ちなみに花火は綺麗だったし、向のノック*7に小学生に混ざって受けたらイップス発動したし、兵頭のサインボールは思わぬ守備妨害で捕れなかったし、何故か見知らぬ少年にキャッチボール誘われてイップス発動した。小学2年生よりノーコンなのどうなってんだ練習しろ。はい。そしてあの時の少年、ありがとう、いつか投げ合おうな。
- 9.21(土) 浦安 ロッテ9-1新潟;実績解除「初のアルビBCビジター観戦」。前日屈辱のハマスタから一夜……で翌日の予定を思案して、結局こうなった。一人くらいいるだろうなと思っていた「見たことある顔」はやっぱりわりといて、有志で応援もできて楽しかった。スコアボードはなんかバグっててウケた。それにしても一塁=ロッテ側の内野自由は完売、外野席もなかなかの入りで驚いたなあ。夢の国のアトラクションが球場からよく見えて、左バッターには「シーまで飛ばせ」なんか言われてたのもウケた。風はマリン以上に強かった。
- 9.24(火) 悠久山 新潟4-3日ハム;実績解除「現地観戦でサヨナラ」。知念大成とチーム、サポーターの「アチコーコーのハート」(と伴在汰文の声)で掴んだ勝利である。で、結局どういう意味なんだ。そこそこのサポーターの数に橋上が「仕事は大丈夫なのか」と問うていてウケたが、幸い24.25が連休という神ムーブでよかった。ちなみに魚沼、浦安には行くのに、圧倒的ホームこと悠久山はこの期に及んでの初現地だった。圧倒的ホームなのに。
- 9.25(水)悠久山 新潟5-11日ハム;実績解除「選手の引退試合を現地観戦」。そんな実績解除はいらないし、前川哲は絶対まだやれると思うので、やっぱり撤回してくれても個人的には嬉しい。当然、稲葉大樹や小池智也ら、他の引退・退団選手に関しても、同様の想いを持っている。
合計;全17試合(中止1、対戦2)5勝 7敗 2引分
インスタ
*1:それも何かの記事で「橋上監督が自らマイクロバスを運転して移動」などという一文を見た気がするが、まあ気のせいだろう。
*2:背番号をよく見なかったが、もしかすると笠原祥太郎(現新潟)の在籍当時のユニかもしれない。
*3:対ロッテ戦は確か五分。
*4:いやいや、もう、なあ。そういうこと(宗教?上の理由)やんか、おまえ。はっきり言うて。
*5:二軍戦やフェニックス・練習試合など、応援団のいない試合に有志で応援歌を熱唱するファンのこと。
*6:「打ち上げて凡退する」ことを、我が家でこう皮肉るようになった。確かにスタグルは美味いが、こんなに胸やけのする量の「フライ」を買った覚えはない。
*7:試合終了後に野球youtuberとの野球体験がグラウンド上で行われ、子供だけでなく誰でも参加できることになっていた。試合終了後のイベントなので時間が心配だったが、杞憂だったようである(白目)。