旅に出たい。

序
文字にしたときの何と直球なことかと思う。しかし、僕からこの欲求がなくなったとき、あるいはかなわなくなったとき、何というか精神が腐敗するような気がする。未知との遭遇、ここ(現実)ではないどこか(非日常)への一時的な逃避……そういうものを決して封じてはいけないのだと、つい最近思ったばかりだった。
さて、僕の場合、旅での移動手段は多くが鉄道になっている。何なら、以前は「列車に乗ること」を目的とする旅も多くしたと自負しているが、最近ではそのような旅はめっきり減った。仮にも「鉄オタ」、うち「乗り鉄」を自称しておきながら、そのフットワークは年々重くなっていて、相棒・マスコロには苦言を呈されているところだ。
ところで、その鉄道には、当たり前だが駅に行かなければ乗れない。

切符を買って*1、ホームに列車がやってきて、降りたり乗ったりする……という役割こそ共通しているものの、その実は1本のホームと線路があるだけのところから、複数の路線が交差するところ、駅舎がユニークなデザインをしているところ、駅舎というよりゴツいビルの中にお店やオフィスが入っているターミナル……等々、一口に「駅」といっても色々ある。
以前(5年くらい前?)は車両に特化して選んでみたが、今回は駅に焦点を当ててトップ10を挙げてみたい。
- 序
- 10位.府屋駅(新潟県・羽越本線)
- 9位.津川駅(新潟県・磐越西線)
- 8位.横川駅(群馬県・信越本線)
- 7位.東京駅(東京都・新幹線、在来各線)
- 6位.谷村町駅(山梨県・富士急行)
- 4位.大宮駅(埼玉県・新幹線、東北本線、高崎線、埼京線など)
- 3位.松本駅(長野県・篠ノ井線、大糸線、アルピコ交通など)
- 2位.海芝浦駅(神奈川県・鶴見線)
- 1位.直江津駅(新潟県・えちごトキめき鉄道、信越本線)
- まとめとおまけ
10位.府屋駅(新潟県・羽越本線)
羽越本線の無人駅だが、2面3線を有し特急も停車する。新潟県内では最北端の駅となる。2022年の5月に一度だけ訪問。
この駅からは、

海が見える。
鉄道番組や旅行記とか、ナントカの駅100選とかに出てくるのは、大抵が眼下に海が広がるとか、山間の秘境駅とか、築百何年の駅舎とかであろうか。景色の良さは当ランキングの選考基準にも含んでいるつもりで、特に海が見える駅とか、海に近いところはポイントが高い。
特に泳がないし予定もないけれど、ぼーっと海を眺めに行きたいことがある。只、ぼーっとできる海が好きだ。何が、と言われても困るのだが、海は良い。僕もマスコロも共通している。
海からの近さでいうと、当駅のホームからも見えなくもない。ただ、青海川(信越本線)や桑川(羽越本線)と比較すると少し距離がある。









駅の出口は山側を向いており、住宅街を少し歩いてトンネル的なものを潜ると、海岸に出られるようになっている。
ただ、長いホームに降り立った時、特急停車駅らしい広い構内と、それにあまりに不釣り合いな静けさを感じた。自分以外にも2人くらい降りた気がしたけれど、反対側には誰もいなかった。
海は良い。何が、と言われても困るのだが……。
9位.津川駅(新潟県・磐越西線)


山も好きだ。そこにある駅もいい。
夏になればひぐらしが鳴き、秋には木々が色づく。冬はその寒さがより鋭く突き刺さるように感じられるが、それも趣だろう。
一度晩秋のつんと冷え切った早朝、始発で通勤をしたことがあった。額に感じたあの空気は、且つて山間の街で4年間を過ごしていたときに浴びたものと似ている気がした。







車止めこそないが、ここで折り返す普通列車を降りたとき、「結構奥まで来たなあ」という感じを受ける。SLはここで給水し、更なる峠越えへと向かっていく。
この阿賀町ではドライブをしていると、よくサルに出くわす。自然豊かだなあ、と思う一方で、時にはそれが牙を剥くこともある。この路線がまた繋がり、SLが走れるようになったのは、本当に良かったと思う。
8位.横川駅(群馬県・信越本線)
2019年の9月、帰省から戻る途中に訪問。

「横軽」の廃止はちょうど僕が生まれた年のことである。それゆえか、僕が「信越本線」は新潟県内以外にも途切れ途切れに点在すること、及びそれがかつて1本の長大な路線だったことを知るのは、かなり後になってからだった。
群馬・長野の同路線にも、かつて特急も走る主要幹線だったことの面影が、随所に見受けられた。長いホームの真ん中に、3~4両編成くらいの普通列車は停車する。やがて目的地・横川駅に停車すると、その先の線路は車止めでぶった切られているだけでなく、頭端式ホーム、その先は柵と、どう足掻いてもこれ以上先へは進めない、という意思表示をしているかのようだった。





この先には、碓氷峠が待ち構えている。と言っても、今は新幹線が軽々と越えていく。かつてこの難所に挑み、上信越の都市を結んだ特急列車と機関車が、車両基地の跡地で眠っている。
7位.東京駅(東京都・新幹線、在来各線)


渾身のドヤ顔でランクインさせているが、そうは言ったって東京。
僕にとってはこの東京こそ「絶景の見える駅」。路線ごとに分かれた複数の長いホーム。そこに次々とやってきては人を運んでいく、彩り豊かな車両たち。改札内にも多く並ぶ店に、行き交う人々。ビル群に響き渡るジョイント音に、列車の接近を知らせるATOSのメロディ。逆に、そういう光景に鉄たちは知らん顔だと言うのだろうか。なんなんだよ「短い10両編成でまいります」って。
丸の内口の駅舎。売店に並ぶ各地の名産。電光掲示板が示す行先には、隣の町、隣県の主要都市、遠い先の観光地……と様々である。起点にして、終点。……それとも途中だろうか。「次の電車をご利用ください」の3分後に、また電車がやってくる。そして、また走り出していく。






大人になってもちょっと優しく見えるどころか、年々進化して厳しくなっているような気がする。それでも、東京はすごい。何が、と言われても、東京だからである。
6位.谷村町駅(山梨県・富士急行)






1929年に開業した、小さな町の駅。一方ではこれも趣を感じる造りをしていて、2017年には登録有形文化財に指定されたらしい*2。……確かに何かの重要な遺産的なものに選ばれたという話は、耳にしたような。
ううむ、自称・鉄オタに復帰するのが少々遅すぎたようだ。というより、あの町についてまだ何も知らなった。もう少し町のことを知りたかったし、写真も撮らなかったのか、撮ったけど消えてしまったのかで、ほぼ残っていない。
駅前の路地。裏手の桂川。駅舎内に入っていた、中華の定食屋さんが美味しかった。近くにあったゲストハウスで、ゆかりのある(?)絵師さんが個展をやっていて、この駅や各地の鉄道風景を繊細に描いていた。


しょっちゅう電車賃をケチるために、ここまで1駅分歩いたものだけど、用水路の水の音がよかった。なんとなく、特にこの駅周辺の雰囲気が好きだった。
確か変な時間に起きてしまって、夜明け前の駅に歩いて行ってみたことがある。やはり水路の音だけが響いていて、あたりは寝静まっていた。やがて少し明るくなったころ、オレンジ色のE233系がやってきた。大都会の通勤電車が、夜明けの山間を走り出す。ここから東京へ乗り換えなしで行ける電車がある、というのも、改めて聞くと不思議な感覚になる。
4位.大宮駅(埼玉県・新幹線、東北本線、高崎線、埼京線など)




山梨在住時代、ここから埼京線に乗り換えて新宿へ向かい、中央線に乗り換える経路が多かった。新幹線はここで乗り降りすることが多い。
大宮で立ち寄る場所といえば、15・16番線である。東の新幹線はここで上越・東北が分岐するが、その彩は実に豊かだ。はやぶさ・こまち等連結した長大編成は何度見ても迫力がある。発着案内に何も書かれていない*3、無人のホームに上がっていく僕を見ても、どうか止めないでもらいたい。何時間でもいられる場所だが、一度夢中になりすぎて、時刻30分以上前に入場しながら指定列車を逃したことがあったなあ。

また、駅ビル内にあるカフェバー「Railway Club」に立ち寄ったことがある。列車待ちの半端な時間に、おしゃれな空間で呑んで休憩しながら、旅の思い出を振り返る……というのに最適だった。
言わずもがな、「てっぱく」を有する鉄道の町。ここを外すわけにはいかない。
3位.松本駅(長野県・篠ノ井線、大糸線、アルピコ交通など)
「まつもとおおおおおおおおおおおおおおおおお」
「まつもとおおおおおおおおおおおおおおおおお」



……という案内があるから、ではないのだが、やはりあれを何度か聞くことができたのはよかった。
実を言うと、乗り換えや駅の見学をしたくらいで、街の観光はほとんどしたことがない*4。だが、やはり各方面に列車が発着する主要駅であること、それも好きな車両が来るので、見ていて飽きない場所である。
2位.海芝浦駅(神奈川県・鶴見線)
2023年8月に初訪問。


鶴見駅の2階から、3両編成の205系に乗る。京浜東北線・東海道線が競うようにかっ飛ばす頭上を悠然と跨ぎ、住宅地や工業地帯の隙間を、縫うように走る。
そんな鶴見線が向かうのは、約4km先、海沿いの終着駅。
というより、海であった。もしくは工場である。
ゆえに、ここが終点でありながら、ここで降りたとてどこへも行けず*5、何もどうすることもできず、ただ行き止まりになっているだけである。

そしてそれは何も問題ではなく、何をどうする必要もない。ただホームにいながらして磯の香りが心地よく、205のモーター音がよかった。それだけのことである。
1位.直江津駅(新潟県・えちごトキめき鉄道、信越本線)
栄えある(?)第一位は、彩と歴史・美味しさが集う駅・直江津。







かつては北陸本線・信越本線が分岐し、昼行・夜行とも多くの特急・急行が発着していた。長大編成に対応する長いホームの他、乗車位置表示なんかも残っており、その面影を感じることができる。
えちごトキめき鉄道に移管された今でも、日本海ひすいライン・妙高はねうまライン・信越本線・ほくほく線へと分岐する、要衝としての役割は変わらない。一度しらゆきを降りた時、トキ鉄の観光列車「雪月花」と並んだことがあったが、とてつもない神々しさを感じた。また、413系・455系が現役で走っているし、観光列車に改造されたキハ40・48もここにやってくる。





直江津というと、駅そばの「直江津庵」、ホテルハイマートの駅弁が思い浮かぶ。東口側には「D51レールパーク」があるが、現在ではたまにしか開館しなくなってしまった。他、水族館「うみがたり」もある。少し歩けば海も見に行ける。
だが、駅のホームにいながら、彩や歴史を感じ、全く退屈はしない。五感が幸せで満たされる、是非鉄オタに訪れて欲しい駅だ。
新潟県では、土休日に使用できる「えちごツーデーパス」*6というフリー切符がある。文字通り連続する2日間が対象だが、当初は2,740円だったので、僕の地元からだと新井まで行けば片道で元が取れる*7。

現在では2,800円に値上げし、来R8年度はさらに3,300円に上がるのだが、それでもここまで行くのであれば絶対に使うべきである。同じ新潟県内でも、直江津までは特急で約1時間半。なお上越妙高までは約1時間50分。気軽に「旅」を味わうことができるといえる。
まとめとおまけ
惜しくもベスト10入りしなかった主な駅
- 河津駅(静岡県・伊豆急行線)
駅を出てすぐの橋梁と河津桜がいい。ここを渡る、251や185などの電車を収めた写真・動画は、画質以外は我ながら非常に気に入っている。
河津駅周辺 橋梁を185系が渡る - 勝沼ぶどう郷駅(山梨県・中央本線)
甲府盆地を見下ろす絶景が魅力で、花見スポットにもなっているようだ。EF64の保存や廃線跡なども良い。ただし、訪れたのは夜*8のことで、それも車移動時。列車では何度も通過しているが、後述の姨捨駅同様、下車はしていない。

勝沼ぶどう郷駅周辺 廃線跡と保存機関車 - 別所温泉駅(長野県・上田電鉄)
車止めのある終着駅で、路線自体の雰囲気がいい。 - 水上駅(群馬県・上越線)
ここを境に運転系統が変わる主要駅。背後に聳える山々から、終着駅の雰囲気がある。温泉地らしい感じもいい。もっとも、悲惨な思い出もある場所だが……。
水上駅 - 大白川駅(新潟県・只見線)
只見線内新潟県最後の駅。当駅で「マスターオブ新潟」を達成。それにふさわしい雰囲気だった。
大白川駅を見下ろす - 只見駅(福島県・只見線)
ホームの雰囲気と、線路沿いの案山子が好きだった。乗ったのが観光列車「只見shu*kura」だったのもあるが、地元の人によるお見送りが印象に残っている。というより、新潟口で平日の普通列車に乗った時も、住民が手を振る光景があった。
只見駅周辺 - 会津若松駅(福島県・磐越西線、只見線、会津鉄道)
駅舎が印象的で、街の特色に沿っているといえる。鶴ヶ城など幕末の重要な歴史を感じるスポットでもあるし、ここからSLに乗ったのはやはり思い出だ。 - 上諏訪駅(長野県・中央本線)
何といってもホームの足湯。諏訪には休憩・ゼミ合宿・遠征時の通過点と計3度訪れているが、街を歩いていても至る所で湯の香りがするし、雰囲気が好きだ。 - 姨捨駅(長野県・篠ノ井線)
言うまでもなく、見下ろす善光寺平の絶景、かつスイッチバック駅。長野出身だった同ゼミの同級生が、帰省で通過する際に鬱陶しがっていたが、鉄オタにとってはやはり訪れておきたい場所の一つと言えるだろう。……もっとも当駅は一度通過したきりで、正式には下車をしなかった*9。
姨捨駅 - 弥彦駅(新潟県・弥彦線)
車止めで線路を切られた終着駅。そのホームも1つだけと駅そのものの規模は小さいが、神社を模した立派な駅舎を有する。
弥彦駅 
弥彦駅 - 馬下駅(新潟県・磐越西線)
当駅で折り返す列車もあり、2面3線を有しながら無人駅。駅周辺にも民家はまばらで、コンビニはおろか商店らしきものも見当たらない。少し歩くと馬下温泉保養センターがある。


馬下駅 - 糸魚川駅(新潟県・北陸新幹線、えちごトキめき鉄道、大糸線)
キハ52の保存車や、トワイライトエクスプレスのレプリカ、模型・プラレールの展示などがあり、こちらも列車待ちには退屈しない。


糸魚川駅には保存車両や模型・プラレールの展示がある - 名古屋駅(愛知県・新幹線、中央本線、東海道本線、名鉄、近鉄など)
バスを降りて、朝日を浴びるセントラルタワーを見たときは感動した。駅の地下街で味噌カツ定食、ホームできしめん、車内で食べた天むす……とグルメの印象が強い。
名古屋駅のセントラルタワー - 市振駅(新潟県・えちごトキめき鉄道)
新潟最西端の駅。いかにも県境らしい雰囲気があり、ホームから海が見える。駅そのものの構造や建物の雰囲気、リアル駅ノートがある……等、推しポイントは多い。上記ランキングの続きで、暫定11位は当駅だと思う。

市振駅
まとめ
東日本ばっかりじゃねえかお前。
張り切ってランキングにした結果、自分の行動範囲の狭さを露呈する結果になったといえる。
傾向としては、複数路線(特に特急列車)が集まり、留置線や車両基地を有するターミナル駅*10、終着駅やそれらしい雰囲気を有する場所、海が見える駅……のいずれかだろうか。もちろん、待合所など設備が充実していたり、美味しい駅弁・お店があったり、名所へのアクセスに便利な駅も好きだ。



2/21現在、「駅メモ!」上の通算アクセス駅数は2,643。正確に言うと降りずに通過しただけの駅や、ルートビューン・レーダーを使った駅も多いが、それらを駆使しても全国の9,370駅にはまだまだ道のりは遠い。というより、生きているうちに全国制覇はおそらく無理だろうけど……。しかし、鉄オタとしては「列車に乗ること」が目的なこともあるし、各地のユニークな駅を目的地とすることもいいかもしれない。
現在、同ゲームで「マスターオブ」を取得したのは新潟・山梨の2県のみ。もうあと3~4都道府県は増やすことを目標に、また出かけたいと思う。
おまけ
車両編はこちら
*1:もっとも無人駅・ローカル線では整理券や「乗車駅証明書」を発行して、車内や降車駅で精算するところが多い。
*2:ソースはwiki。2017年、筆者は在学中。
*3:中央の15・16番線に発着する列車は数少なく、電光掲示板が空欄なことが多い。一方、ホームの中腹には「見学エリア」が設けられており、普通にベンチもあるので列車待ちには都合がいい。
*4:一度ここにある野球専門店に行こうとしたが、臨時休業していた。
*5:改札外はすぐに東芝の工場の敷地になっており、関係者以外は立ち入ることができない。一般利用者は駅からは出られず、改札機にタッチしてすぐ引き返すしかない。
*6:県内の鉄道路線は全線対象で、別途特急券を購入すれば特急も乗車可能。金・土または土・日が対象で、日曜日には購入できない。参考→えちごツーデーパス:JR 東日本
*7:参考;新津~上越妙高・北新井が2710円。新井までが2820円。
*8:といっても眼下の甲府盆地は夜景も綺麗なので、夜でも注目してみてほしい。
*9:記述の通り、スイッチバックと列車交換の為、停車時間が長い。
*10:この観点で行くと、3路線4方向が交差、特急停車駅でSLや観光列車も発着、留置線・車庫がある……ということで新津駅も入ってよさそうなところだが、なんかアレだったのであれにした(←は?)。