年が明ける晩は、ウルトラマンの背番号で悩む夢で明けた。
所謂「初夢」とは1月1日夜→2日朝にかけて見る夢のことらしい。
つまり元日に目覚める前に見たものは違う、ということだ。さてどうだろう。僕の記憶の中で、カウントダウンをせずに眠って迎えた元日は2020年だけだ。そもそも最近は日付が変わってからじゃないと布団に入っていない。早く寝ろ定期、である。
まず登場したのはガイア。大地が遣わした、赤い光の巨人―その名にふさわしく、粉塵を巻き上げて戦いに走っていく姿は昔と変わらない。かつて憧れた、勇猛果敢なガイアの戦いぶりに興奮し、その背中を間近で応援……
なんてことはせず、一目散に走って逃げた。自分の世界に怪獣が現れるというのはパニックになるものだ。あれはコッヴ?ガンQ?サタンビゾー?身長云中何メートル、体重何万トン!……なんて分析していた小学生達は、いま思い返しても随分冷静である*1。
ところで夢の中で僕は考えていることがあった。
「ガイアの背番号ってなんだっけ?」
プロのスポーツ選手のように、ウルトラマンにも背中にロゴと番号があるよな、と僕は思ったらしい。
防衛チームの隊員に番号が振られている例はあったはずだが、これがウルトラマンになるとどうなるのだろうか。それこそ「ウルトラマン、No.6(ナンバーシックス)」と呼ばれているタロウも、背中には【TARO 6】のように書かれているのではないか?さて、ガイアの番号は……。
「9、だったかな!」
謎のドヤ顔。夢の中の僕は随分、想像力が豊かなようである。現実に分けろ。
続いての場面。
気が付くと、僕は薄暗い山道にいた。僕以外に、似た格好をした人々が走り回っている。路肩に止まっている、特殊な色をしたパトロールカーと、ヘルメットを被った機動隊に似た人。
というか僕も同じ格好をしている。水色に近いユニフォームに、腰元にはこれまた特殊なビームとか撃ちそうな拳銃。胸元に目をやると【SRC】という文字……。
「これはチームEYES」
なんということだ。とはいえキャップはヒウラではなく、シノブ、ドイガキ、アヤノ……といった面々もいない。初期ユニフォームでありながら、所謂「THE EYES」ではないらしい。かといって、新生チームで隊長に昇格したはずのフブキもいなかった。そもそも、
「コスモスに出てた人誰もいねえ*2」
走り回るEYES。誰も知らないし、TVで見たこともない。それなのに僕は隊員として順応し、薄暗い山間部で起こる事件の解決に奔走する。
「むっ」
敵の気配。サーチには映らないが、直感はそうだと言っている。待避所に放置された車の陰に隠れながら、僕は敵が飛び出してくるのを待った。一度伏せた後、ゆっくりと起こし、気配を消して進む。半分自然に同化した放置車の窓ガラスに映る自分。……ん?
「……この人、ケガしたムサシにすっごい似てる」
なんということだ二回目。
似てる、どころではない。鏡に映った顔は紛れもない、春野ムサシだった*3。左頬の傷跡が生々しい。
「ムサシーッ!」
自分を呼ぶ声。聞き覚えのあるものではなかったが、隊員の誰かが走ってきたようだ。ゆっくりと銃を構えながら外へ出ようとする。……と、その時だった。
「大丈夫か?」
「どこ行ったんだ、ムサシの偽物」
なんということだ三回目。
物陰から覗いた先には、ヘルメットもプロテクターもつけていない、ふらふらとした足取りの春野ムサシがいる。今の僕はムサシだから、つまりあれはドッペルゲンガー。ただ同時に理解した。このミッションはムサシの偽物を討つことなのだ。
迷っている暇はない。どちらが本物か、と問われれば、装備のある僕のはずだ。
「動くなドッペルゲンガー!」
ラウンダーショットを”丸腰”のムサシに向ける。……ところが。
「いたぞ偽物ォ!」
なんか同じような勢いで、同じ武器がこちらに向いているのが見える。
「えぇ……」
困惑する、それ以外に成す術はなかった。なんとムサシ=僕のドッペルゲンガーを庇った隊員たちが、味方であるはずの僕にラウンダーショットの銃口を向けたのだ。引き金をためらった刹那、赤いレーザーが放たれる音がした……。
―こんな感じの夢だった。
やはり僕はムサシにはなれない。当然、EYESにも入ることはできない。彼らのような「真の勇者」になるために、足りないものは多すぎる。
先日まで続いたyoutube配信が終わったが、大人になって振り返るときに「コスモス」から得ることは多い。初代隊長・ヒウラの信念であった「真実を見極める眼」。それは別世界の、僕の夢に登場したEYESにも浸透していたのか。
だから彼らは僕を撃ったのだ、きっとそうだ。だけどやはり、疑わずにはいられない。もしあの丸腰のムサシのほうが、侵略者の作り出した幻影だったら―?というか、
「TEAM EYESは、攻撃部隊ではない!!」(cv.市瀬秀和)
お互い様だが、躊躇せずに銃口を向けてしまったことを恥じるべきである。
ちなみに初夢はなんだったのかというと、少年野球で試合に備えたり引き上げたりする内容だった。