むしょくとうめいのらくがき

鉄道と酒と野球ではしゃぐ4歳魚と26歳児の気ままな放浪記とか落書き 

バットは空を切って、グラスが軽く当たる音を聞いただけ

 ハッピーバースデー。

 

 正確には先週の水曜日がそうだった。そしてもっと正確に言うと、その当日は6時間労働したため何も幸福ではなかった。……いや、勤務中に何事も起きなかったので、やはり幸せだったかもしれない。基準は「その日に何があったかを次の休日に思い出せない」点にあるので、これに準拠するとやっぱりハッピー・バースデーと言える。

 

 

 その日の出勤前、県立の野球場で開催された一般向けイベントで「県内1大きなバッティングセンター」というものがあり、それに少しだけ参加した。

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2021.4.21 HARD-OFF・ECOスタジアム新潟(通称「エコスタ」)

 僕が小6の時に完成し、以来新潟県を代表する本格的な野球場として御馴染みとなった「エコスタ」。完成初年度の2009年7月、球場の「こけら落とし」と銘打って行われたNPB公式戦「広島ー阪神」の2戦目のことは忘れられない*1。そんな球場で、ゲージがある事と相手がマシンなこと以外は全て「実際の規格」でのバッティングを行えるイベント。

 存在を知ったときはまあ「なんて贅沢な……」と思った。確かにバッティングセンターの1ゲーム24球に500円は少々割高だけど、ここには野球場にダグアウトから入り、ベンチに荷物を置き、人工芝でのび~っとする(?)代金も含まれている。

 

 フィールドには外から「ダイレクトイン」はできない。球場事務所がある正面玄関のようなところから自動ドアをくぐり、ちょっと暗めな通路をすすみ、たぶんもう一回くらいは自動ドアをくぐった。そして開けっ放しになっているとはいえ、分厚い鉄のドアをくぐった先がベンチ、その先にフィールドがある。

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中に入れる感動 -2021.4.21

 綺麗な人工芝のグラウンドに辿り着くまでに、日が当たらない屋内通路をすすんだり、ブルペンや室内練習場、またスタンドに隠れるように設けられた広めのベンチ……。

 そういうものを当事者として味わう機会は、ゼロだったわけでもない。しかし少なくとも、エコスタの人工芝をそれより少し低い3塁ベンチから眺めたことは、小・中あわせてもゼロだった。ついでに言うと、開会式やイベント等でチームが中に入れる機会はあっても、僕だけがいなかったりするのが余計に悲しかった。大会を勝ち進んで次の会場はここだ!となったのに、存在意義不明な学校行事と日程が重なって出場辞退を余儀なくされた……みたいなこともあった。

 

 やる側としてつくづく縁のない、そんなエコスタにようやく入ることができた。その打席に、あの12年前にカープの主砲・栗原がレフトへ逆転2ランを叩き込んだ*2のと同じ右打席に立てるだなんて。天候にも恵まれて*3、嚙みしめるように24回分、思い切ってバットを振ってきた。

 

 ……感動でボールが見えなかったとか、広すぎて感覚がつかめなかったとか、一切そんなことはない。なのに打球はレフトスタンドどころか、フェアグラウンドにすら一球も飛ばなかった。マシンの放る112キロの直球にスイングするが、バットは「スカッ」と虚しい音を立てるだけである。自分の振るバットがそもそも、どこを通っているのかわからない。別な参加者が順番待ちの最中にキャッチボールをするなど遊んでいて、ついでに打球に備えてくれていたが、別な意味で「一歩も動けず打球を見送るのみ」になってしまった。申し訳ない。

 やはりやる側として縁はないのかもしれない。そしてやはり、誕生日だからといって浮かれている場合ではなかった。

 

 例の「アレ」の影響を受けたこともあり、現チームには自ら「出場選手登録抹消」を願い出たが、このままでは自粛が終わっても昇格は怪しい*4

 危機感を抱くふりはしてみるが、この金・土も両親のどこからか用意してきた酒を頂き、昼まで惰眠をむさぼり、贔屓球団の試合でワイワイキャッキャしていた。どうのこうのと言っている間に阪神の先発・伊藤将司が9回を投げ切っていて、昨日は1日が終わった。白ワインが美味しかった。阪神が勝ったので、やっぱりハッピーだった。サンキュー若虎、サンキュータイガース。

 

 幸か不幸か今日は中継がない。そして天気が悪くなってきた。そのせいか頭が痛いけれど、心おきなく布団に戻れる。24年でわかったのは、結局ぬいぐるみと一緒に布団に潜ったときが一番幸せなのだということかもしれない。

 

 

*1:以前書いた気もするけれど、6-4-3などのいわゆる「内野ゴロ併殺打」で大喜びするなどの変な性癖が芽生え始めたのはこの頃だと思う。

*2:それを僕はレフト外野席で、阪神・金本と同じように見送ったのだった。

*3:文字通りの「雲一つない快晴」だった。半袖でも十分なくらいで、行く途中の車では当然Orangestarを流した。

*4:そもそも一軍・二軍の概念を作れるほどメンバーはいないのだが。