むしょくとうめいのらくがき

鉄道と酒と野球ではしゃぐ4歳魚と26歳児の気ままな放浪記とか落書き 

列から外れようとしたらピーッ!と笛が鳴った

今週のお題「初夢」

 

 

 気を抜かずに過ごす、と誓って見事に気を抜きまくった結果、集合場所まで歩くのにすら足が機能しない。これで「通常練習」だと言われれば即ちそれは「死」である。全身の筋肉・関節が気絶し、チーム内においては「自主練をサボった意識低くゆるいゆるキャラ=害悪」として社会的な死も待っている。おお、こんなはずではなかった。しかし一方ではむしろなるべくしてこうなった、ともいえる。

 

 ところで今日は何故、集合場所が「校門」なんだろう。そもそも1月なのに雪どころか、雲一つない快晴である。つんと冷えた早朝の空気に、日光が眩しい。

 しばらくすると、ぞろぞろ人が集まってくる。だが様子がおかしい。

「……他校もいるんだが?」

 聞いていない。他校と合同練習なんぞ、記憶の限りでは前例がないのだが。というか、それ以前に問題がある。

「……自チーム、来ないんだが?」

 聞いていない。それとも実はオフなのに、騙されて呼び出しを受けたパターンだろうか。同級生内カースト最下層中のド底辺な僕なら十分あり得る。

 

 ともあれ時刻である。知った顔はいなくとも、程なく現れた引率者らしき人物が「よし、全員いるな」と決め顔で言って歩き出す。……ん?

 何やら幼い―「黄色い声」とでも言うのだろうか、挨拶が聞こえてくる。

「おはようございまーす!!!」

 声色を良く表現したといえる、黄色い帽子をかぶった行列の後ろに僕はついた。というか、つかされた。どういうわけか、僕を含めた他校の封建棒球修行僧雑用係(勝手に自身と同類ということにしておく)も、各々列の合間に入っている。

 これは保護なのか。なんか交通安全行事的な?それを地域貢献の観点で、学校の野球部が買って出ている、という絵面なわけである。

 

 黄色い帽子を視界の下部に留めながら、尚も思う。

 この快晴で、寒くて、オフで、でも野球以外の用事で僕はユニフォームを着て、この「地域貢献」に駆り出されている。だが、チーム内でたった一人呼ばれたということは、せいぜいこういうボランティアの枠を埋めるくらいしか貢献する余地はないのだ、というメッセージなのだろうか?どのみち野球では役に立てないし、暇そうだし、お前がやれ、みたいなことか……?

「おぉ、もう……」

 雲一つない空模様が、かえって僕には悲しく映った。同時に、この律儀に近所の人々に「おはようございます!」と挨拶し、横断歩道を手を挙げて渡る無邪気な幼子たちと、列をなして歩いている自分が、とてつもない馬鹿に思えてくる。これを守って歩くたび、どんどん僕は何かの道を外れていくのだから。

 あ~あ、どこか旅に出たい―黄色い帽子の群れから、意識は遠ざかって……。

 

「ピーッ!」

 

  ……という、警笛?の音で目が覚めた。

 これは2022年の象徴か、はたまた2023年もこうなるのだという占いか。いずれにせよ僕も含め、同じような日々は過ぎていき、社会は無数の歯車たちによって動く。それはトリプルファイヤーの歌うように、風船を膨らますとか、棒を突き刺すとかいう芸の繰り返しでしかない。

 それが「確実にスキル」がつき、「大きな芸」=責任が伴うということにやがてはなっていくのかもしれない。トリプルファイヤーの「スキルアップ」という詞を皮肉と捉えるか、それとも名誉や目標と捉えるかは、個人次第だろう。

 

 随分縁起の悪い初夢から、明けて迎えた1月2日は既に正午をさしていた。最後に意識を失ってから十時間以上経過したが、質はまったく伴っていない睡眠であった。