日直だったから疲れた。115系の揺れと、座席のふかふか加減が心地よくて、寝過ごしてしまいそうだ。
1.好きなことについて話せと言われる
号令により「起立」「宜しくお願いします」で始まり、「ありがとうございました」「着席」で終わる授業風景。
どこの職業訓練校もこんな感じだろうか?日直に掃除当番など、懐かしいシステムが新しい日常になった。
ところで日直がやることは、
・号令
・日誌の記入
・ホワイトボードを消す
・スピーチ
主にこの4つ。
訓練生にはいつもこの「日直」システムは不評だという。言うまでもなく、4つ目の「1分間スピーチ」が嫌がられているわけだ。
何でもプレゼンの練習だ、面接の自己PRで強くなる!……という理屈はごもっともだが、回避できるのなら全力で回避する。人前に立って話す機会なんぞ、勝利投手時のヒーローインタビューかナントカ文学賞の受賞時でじゅうぶんである。バンドのMCなどは二度とやりたくない。
ということで家族に相談したのだが、
「喋らなければ退校なんでしょう?早く帰ってきて日本酒を恵んで頂戴」
「ぐだぐだ言ってると捕食するよ」
はい。
僕の妹・弟たちは頼もしい。おかげで腹を括り、始業前の教壇に立って1分話すことに成功した。だけど本当に何故、蛙や魚よりも部屋内カーストが低いのだろう。
しかし訓練校は楽しい。
何がそうかって、先のスピーチで嫌だ嫌だと言いながら、その裏ではどうやって他の受講生の興味を引き、質問や雑談を導くかを企むことだ。
日誌への悪戯書きや、ペイントアプリの基本操作でマスコロやコウペンちゃんの絵を描いて自己顕示をすること。グループワークの中で前職の思い出を語り合うこと……。
受講生もある程度の人生・社会人経験を踏んできた人たちだ。それぞれの経験を活かして、同じように企み考えながら、1分間のスピーチも休み時間の雑談も駆け引きをしている。
他の人の話はシンプルに興味深いのだけど、質問する時は「どこなら聞けるのか」しか考えない。そんなに知りたい情報ではないけれど、僕が突っ込めそうで、相手が突っ込んでほしそうな所を読むわけだ。……全部大学のゼミ*1で「質問が無いので○○さんお願いします」による発言強制に備えて培った技術である*2。
今回僕は「私の好きなもの」について、「駅メモ!」を選定した。
最初のテーマで具体的なラインを攻めてしまったからヒヤヒヤしたけれど、連想されるキーワード(駅、路線、観光スポット、位置情報ゲーム……)をいくつか強調して盛り込んだことで、考えられそうな質問が来てくれたことにはホッとしている。
何の話だっけか?
……初対面相手に口から出まかせを言うスキルとか、これはコミュニケーションのゲームである、とかだろうか。概ね間違っていない気がする。
スピーチの注意事項として「結論から話しなさい」と言われていた。これは面接やプレゼン、実務中の報告でも同じことである、ということだ。
なら言い切ってしまおう。当面、スピーチに関する類のものは御免被る*3。
2.流されて無人駅で降りる -矢代田駅
話は変わるのだが、気が付いたら無人駅で降りていた。
新潟17:01発の快速に乗って、うっかり寝過ごした。列車は古津を通過するので、引き返すポイントは2駅先の矢代田になる。
……というわけではないのだった。
シンプルに降りたくなくて、少しでも長い距離を乗りたくて敢えて乗った。言うまでもないが乗り越し分は支払った。115系に対するグリーン車課金だと思えばちょうどいい。
矢代田駅は上り1番線と、下り2番線でなる駅だ。
にもかかわらず、ホームの構造は”本島”(=単式)の1番線に対し、”離島”のようになっているホームを挟んで外側に下り本線の2番線が設けられている。2番線に下りると、対岸のホーム側には白いフェンスがあり、上り本線である1番線との間には不自然な空白がある。
元々この駅は下りのみ退避可能だったのだろうか?必要がなくなったのでホームを一部封鎖するなんてよくある話である。あるいは客扱いをしない業務用車両を留置する用だった……とか、色々憶測はできる。
この矢代田駅、隣駅の古津や田上などと比べても、近隣の駅ではかなり駅舎は新しくて立派なつくりをしている。駅前のロータリーも整然としているし、トイレも綺麗だ。
西口を出てすぐのところには公園がある。トレインビューとして中々良い場所に見えるが、公園の隣は保育園になっていた。なんだか気を遣ってしまいそうである。
17:23に降りてから、新津へ引き返す電車までには26分の待ち時間がある。
高校の時も、電車で帰宅した時はよく流されたものだ。しかし、閑散としたホームでは非常食や昼に食べ損ねた弁当を食べるには都合がいい。小腹を満たし、深呼吸し、ホームの端から端をうろちょろして、適当に考え事をしていればあっという間に過ぎる。
パチンコ店でバイト中に「俺が負けたのになんだその顔は!」と、まさかの”スマイル”にクレームを付けられた人の体験談。めちゃくちゃ草。
短期間で大幅な減量に成功した人の、目標及びステップの設計理論。講師を含めた教室の興味を一手に引く光景に大草原が生まれた。
思い思いの”おうち時間”を楽しむ人の話。節約や掃除だって趣味になるだろう。
多くの写真家が115系にカメラを向ける光景を思い浮かべて、あなたは何鉄なの?と、詳しくないとは言いながらも興味を示して質問をくれた人。「我が鉄道旅は呑み鉄也、嗚呼、今日もいい気分!」と言うことができず、上手く展開できなかった。国鉄時代から走っている車両に、異なる3種類のカラーを持つ特急列車*4、さらには臨時の観光列車などもあって、新潟の鉄道地区は見ていて面白いんですよ~!なんて。嗚呼、言えればよかったなあ……。
なんて思っていたら電車が来た。
帰りたくない!!
3.おまけ ~美味しそうな電車を眺めようのコーナー(?)~