今日は海沿いを上越方面へ向かうことにした。
1.新津~上越妙高~糸魚川/信越本線・北陸新幹線
新津(7:51発)~上越妙高(9:39着)/特急しらゆき2号
ツーデーパスを使い、海岸線を西へゆく。何度かやっている旅程だが、何度その道を辿っても、良い。そこにあるのは、何度か訪れていて慣れている、という安心感と、現実をしばし離れて遠くの知らない世界に旅立つのだ、という高揚感。一見すれば矛盾に見える二つの要素は、しかし今日、三連休のうち日・月と意図しない2連休を獲得した僕を、現実から遠ざけてくれるものには違いなかった。
というわけで、今日も晴れている。予報では少し小雨が降るかもなあ、なんて言っていたが、降り注ぐ朝日にはまだ次の季節の温度や色はない。まだ、今日も夏は終わりそうになかった。
そんな朝日の光にに照らされて、今日も2番ホームに定刻通りの上り特急が滑り込む。
「やっと推し活できた💢💢💢💢💢💢」
はいお待たせしました。
先月の東京遠征時も旅を始める列車にするはずだったのだ。今日は寝坊しなかった。実に幸先が良い。
実際、相棒・マスコロの抗議は正しく、唯一神E653に乗車するのは6~7カ月ぶりのことである。先月は遠征に出たものの、「旅」らしい旅ができているか、というと、そうでもなかった。というより、「旅」とは実に難しい。日常ではない風景に五感を刺激され、興奮し、または癒されること、ましてそれらを思い出に残すことは、なおのことである。
話を戻し、E653系に乗車して西を目指そう。ともあれ、ツーデーパスがあり、天気は快晴で、特急列車がやってくる。もうそれだけで、僕らが「おでかけ」をする理由・動機になるのだ。絶対にその必要性がないことを承知のうえで、今回は指定席を取った。気合は十分である。
田園は稲刈りの時期になった。豪雪にも酷暑にも負けず、越後平野には黄金の稲穂が今年も実る。僕にとってそれは「現実」の象徴にもなり得るけれど、これは特急列車の車内、それも唯一神・E653からの車窓なら、随分と違って見える。
平野を駆け抜け、丘陵を越え、海岸線に出る。
どうせ指定を取るのなら、海側―進行方向右手を抑えればよかったのだが、まあ、こだわらなかった。今日だってどのみち同じ海の、波の際まで降りる予定なのだ。しかし車窓から見るそれは、味わい深かった。同じ路線を辿ってきて、同じ新潟県内なのに、海が見えただけで、随分と遠くまで走ってきたような気になるのだ。
直江津を発車すると、海岸線と別れ、山へと近づいていく。
もっとも、この特急は向こう側の山脈を越えることはなく、県内でその旅路を完結してしまう*1。まあ、距離的にも時間的にも同じ県内を走ったとは思えない、乗りごたえ?的なもの*2を感じる。言うまでもなく、それは満足感であり、幸福感である。且つ、降り立った駅で感じた空気は、確かに新潟県内なのだけれど、やっぱり「地元」のものとは違っていた。
上越妙高
上越妙高で乗り換える。しかし腹を壊したため、とりあえず休憩する。
よく見ると、向かいのホームに何かいる。小さめだが近代的?で新幹線の高架があり、すぐ目の前に大きなホテルが構えている駅には、あまり馴染まない、重厚なディーゼルエンジンの音。
これは紛れもなくキハ40形気動車、紛れもない、令和に生き続ける国鉄の遺産!
……なのだが、この列車のコンセプトは気動車のディーゼルエンジンなんかではなくて、新潟の食とお酒を楽しむことである。この列車でのお出かけは、「目でも味覚でも楽しんでね♪」だそうだ。
といっても今日は乗らない。
マスコロは何か言いたげだが、乗らない。このエンジン音だけで吞めそうだが、酒もまだ、買わない。……しかし後から振り返ると、もう吞んでしまってもよかったかもしれない。
シュクラを見送る。その前に、普通列車がやってきた。色も、正確には形式も変わっていたが、紛うことなきE127系*3が走っていた。また、次の電車がやってきた。
「なんてすごいんだ……(恍惚)」
あえなく兄弟の語彙力は喪失した。目の前に、浪漫と、思い出と、華と、彩。片や圧倒的な非日常の象徴だが、もう片方は「かつての日常」だったかもしれない。しかし、令和の現代に「急行」を名乗る列車は、国鉄時代から続くJR線にはもう、走っていない*4。
乗り換えの合間に良いものをたくさん見た。しかしトキ鉄、本気を出し過ぎである。
次の列車の前に、寄りたいスポットもあったのだ。
山を見せた。
「えっそれだけ?????」
はい。
正確に言うと、駅メモのしゅかイベでチェックポイントだったのだ。確かにここには大昔、何かがあり、先人たちはここで何かをしつつ、同じ山を見た。それが歴史上非常に重要なことだとして、釜蓋遺跡と呼称されている。
たぶん、向こうの山は、今日とそんなに変わった姿はしていないんじゃないかなあ。そう考えれば、確かに重要な場所なのだと思った。
上越妙高(10:43発)~糸魚川(10:56着)/はくたか555号
上越妙高駅に戻り、新幹線に乗り換える。
西と東の境界は当駅に設定されたはずなのに、速達便は一切停車しない。ホームに上がると、対岸をちょうど上りのかがやき号が颯爽と通過していった。おかげで当駅に停車するはくたか号は1時間に1本くらいしか来ない。
チェックポイントに立ち寄る行程を考慮しても、1本前の列車に乗り換えるのでも不可能ではなかった。だが、休憩のついでに色々見ていたら、時間は過ぎる。それでも今日はまだ始まったばかりである。
定刻通りに列車は出発。自由席は空いていた。みんなかがやきに乗っちゃうので、途中駅には用事が無いのだろうか。
言うまでもなく、ツーデーパスは大人の事情で使えないので一度財布の奥にしまっておく。とはいえ便利な切符である。新潟縦断だけで元を取れて、2日間使用できて、三セクも使える。18きっぷではできない、特急・新幹線の利用も、乗車券としてのみ有効になる。
また、しらゆきから新幹線に乗り換えるので在来特急が割引になって、且つ隣り合う1駅ぶんのみの利用なので乗車券が安い料金設定になっている。この度から帰ってきて2日後くらいにニュースを知った。料金把握のために記録した切符の、【乗継】の太字も、間もなく思い出になるわけである。まあ是非はともかく、実質値上げするんじゃん、という点には、いち庶民として毒づいておくことにする。
約12分程度の乗車で糸魚川に到着。
1駅だが地味に距離がある。とはいっても、在来線が直江津まで遠回りしているところを、トンネルにより直通させている区間である。それはそうである。
2.糸魚川~市振~直江津/日本海ひすいライン
糸魚川(11:49発)→市振(12:08着)/日本海ひすいライン
糸魚川で再び在来線に乗り換える。
といっても、50分近く待ち時間ができてしまった。ここでの乗り換えは想定されていなかったか、それとも休憩や切符の買い直しのための時間だろうか。もっとも、
退屈せずには済んだ。今にもエンジンの唸りが聞こえてきそうである。ここはキハ52だけでなく、プラレールとか模型とかもいっぱいある。
満喫していたら、泊行きの列車が到着するとの放送が入った。
発車時刻の20分以上前なのにもう来たのか、と思ったが、本当にそういうダイヤだったらしい。しかし、乗り換え待ち*5や列車交換*6、あるいは乗務員交代をするならまだしも、特にこの列車は何かを待ったり誰かと交代する、ということはしないようである。只の休憩だろうか。ちなみに復路=直江津方面へ戻るときも、やはり当駅で20分近く停車した。
ET122は定刻通り、糸魚川の長いホームを発車。この先は青海、親不知、市振の順と停車する。
各駅の長いホームに、雑草がところどころ覆っている留置線らしきもの。対岸のレールとコンクリートも、かつてはホームであり、特急通過待ち時なんかに使われていたのだろうか。先の糸魚川も、9両……いや、もっと長い編成に対応していた駅だ。ここは旧・北陸本線。北越、はくたか、きたぐに、日本海、トワイライトエクスプレス……数々の特急や急行が、これから通っていく天下の険・親不知子不知を潜り抜け、近畿と北陸・東北を結んでいた。
1両や2両の気動車が、今はこの路線の「普通」列車であり、長大なホームに対する違和感も、それこそ雑草で隠れたりして、薄れてきた。各駅とも、ここから先は立ち入らないでください的な柵がホームの途中にあったりする。この路線に乗り、先のような「遺構」を見るたびに、昔はこんな感じだったのかなあ、なんて想像してみるわけである。
甲高いエンジン音がトンネルを抜けて、列車は市振に到着。
ホームに降り立った瞬間に感じた潮風と、どこか取り残されたような静けさ。ここがとりあえずの目的地である。
市振
新潟県内最西端の駅。駅名標も示す通り、次の駅は越中国=富山県だ。しかし、
反対の直江津方面=新潟県側が県境っぽくて、もう既に異郷へ来てしまったのでは、と思った。というか、海に大きくせり出して行く手を塞ぐ山の壁もさることながら、
目の前は海である。青海川ほどその距離は近くないが、それにしたって当駅が「秘境」を名乗るには、まあ基準は満たしたと言えるんじゃなかろうか。何せ、せいぜい聞こえるのは波と風、季節遅れの蝉、秋の虫、颯爽と通過するトラックの音である。
ここにはリアル駅ノートがあった。有志により設置されたのだろうか、ありがたく「到達記念」を書かせていただいた。
かつては有人窓口があったらしき跡、しかし今となっては完全な無人駅で、とにかく静か。駅舎の二つくらい前の時代に取り残されたような雰囲気に、県境を名乗るには実に相応しいが、鉄道会社の境界駅としては似合わないなあ、なんて思った*7。
実際の県境には歩いて到達することができる。
そのまま「境」という名の付いた川が、国を分けている。たった109mの橋を、いちいちドキドキしながら渡る。おそらくは車なら気付かず通り過ぎてしまうだろう。どうせすぐ引き返すのに、我ながら律儀なのか、単に滑稽なだけなのか。
そして海に近づく。
海は良い。やはり何も聞いてもらいたいことなどないのだが、波は勝手に喋ってくれる。……いいや、正確に言うとこちらも喋りたければ勝手に喋るのだけれど、とりあえず良い感じに、寄せる波がそれらのモヤモヤをかき消して、静けさだけが残るのだ。
海岸線を見る。あっちは新潟方面だ。
「負けたんじゃない、逃げるんじゃないさ。ほんの少し弱くなっただけ……」*8
「呑まずして既に酒弱くなった??缶ビール揺れてないよ」
はい。
ところでET122ってあれ、気動車ではあるけど「ディーゼル」なんですかね。 教えて詳しい人。
この後は近くの道の駅に寄って昼食にした。食堂でビールを……と思ったら、メニューにはないが隣のコンビニで買って持ち込んでよい、とのことだった。ああ少し、缶ビールを少し!!!
市振(15:06発)→直江津(16:32着)/日本海ひすいライン
というわけで帰路へ就く。
この時はまだ「帰路」のつもりであった。一度は越えた関所と県境に別れを告げる。
再び気動車に乗り、旧特急街道を北上していく。甲高い叫びを上げ、長大なホームに滑り込み、また出発する、一両のワンマンカー。あとにした2面4線?のわりと立派な駅も、確か無人駅だったから、降りる人は前の扉から降りるよう促す放送が流れていた。
歴史を感じられて良い。だが、それは「失われる」だけで終わるものでなく、新たに始まり、続いていくものであることを、どの路線にも願うばかりである。
何しろ、
この、海岸線の故郷から続く路が、負けたとき、逃げるとき、あるいはそのいずれでもないときも、よき肴であると思われるのだ。
3.帰路
と、「嗚呼、少し酔ってしまったなあ」で終わればよかったのだが……。
時刻は17時を少し過ぎたタイミングだった。帰るには惜しい。まだ夕食には早い。とはいえ、次の新潟方面へ直通する特急列車は、17:38発。その後は18:43発の快速列車もあるが、速達列車はその2本のみである。
ううむ、どうしようかなあ。何しろ、1日はあと6時間半程度も残っている。少し考えて、
「湯沢のチェックポイント回収して、新幹線で優雅に呑み鉄して、締めにするか」
先述の駅メモイベントは、残り2つのスポットにチェックインをすればクリアであった。対象となる地点は、いずれも越後湯沢駅が最寄り。迷った末、行くしかない、と足はHK100形の車内へと向かっていた。
既に真っ暗闇な車窓の僅かな光を眺めながら、気が付いたら爆睡し、また気が付いて越後湯沢に到着した。時刻は19時をまわっている。少しお腹が空いてきている。何なら、ここで夕食にしてもよいかもしれない。
だが問題がある。
「マスコロ、ご飯食べていくかい」
「良いけど、お店全部閉まってるよ」
「うそだろぉ~?」
Youtubeの見過ぎで声が変になる。今旅行ええ感じやねん。
新幹線駅らしい、駅ビル内に御土産売り場や飲食店が並ぶ光景に、次々と幕がかけられていく。チェックポイントの一つ・ぽんしゅ館も同様だ。ゲーム内ではそれでも行ったことになる。
切り替えて、二つ目のチェックポイントである「小説『雪国』の碑」を探そう。駅構内からは拾うことはできないが、まあ離れてもいない、という位置にあった。だが、もしかすると在来線車内から頑張れば拾えたかもしれない。ともあれ、これにてイベントをコンプリートし、報酬アイテムを獲得した。
時刻は20時近くになった。そろそろ、お楽しみの新幹線に乗……。
「……指定、B席しか空いてねえ」
つまり3人掛けの真ん中の席である。「最も空きあり」の表示の号車でさえそれであった。こういう時、実質空いてない、という判断を下しがちである。
連休の最終日で、同様に帰路に就いているのだろうか?まあ、おかしな光景ではなかったはずだ。ツーデーパスが使えている=今日は土日祝のいずれかである。フリーパス系のおトクなきっぷ各種の存在を考慮すれば、やはり土日休みというのは望まれ、それらを旅に使いたくなるのも納得である。
ということで何を思ったか、1本(=20:14発「とき341号」を)見送った。自由席という選択はなかったらしい。で、後続=20:56発の指定席を確保する。
で、暗闇な湯沢の街をうろうろし、一応やっている店もあったがそのいずれにも入るのを諦め、足湯は外国人の若者で賑わっていて、駅に戻り、新幹線改札をくぐった。コンビニに駅弁でも売ってないかな、と思ったが、ない。流石に空腹なので食料は確保する。時刻にして20:15分。まだ次の電車まで40分以上もある……だけではなかった。
「ただいま新潟方面は約20分遅れて運転しております」
オワタンゴ。
だるだるだるだるだる、とマシンガンのような打撃を受け、僕は絶句した。ということは、予定の列車まであと1時間待つことになるのか。やっと来た!と出迎えた電車は、残念なことに指定列車の1本前。これには乗れない。
何かベンチにおるな、という視線を向けながら、E7系が悠然とホームを発車していく。いつもなら何て事の無い、新幹線ホームでの待ち時間。つまり自由見学であるが、時間帯のせいなのか、何も来ない。せいぜい、下りのたにがわが終着で入って来たくらいである。
海では心地よかった「静けさ」も、遅れている電車を空腹に耐えながら待つホームでは、居心地の悪さに変わる。
よくよく考えてみれば、無理をする必要はなかった。しらゆきで酒盛りでもしながら折り返し、夕日を車窓から眺めて帰ればよかった。あるいは鈍行に乗り、途中下車で外食することもできた。イベントの終了もまだ12日残っていたので、改めて行くこともできたのだ。いずれにせよ、店が軒並み閉まった暗闇の中に、無理して突っ込んでいく場面ではなかったと言える。
車内で食べようと思っていた食料を、補給。そういえば、喉も乾いたな。本日2本目の缶を、カシュッ、と開ける。
「鉄道旅に乾杯!」
「疲労で酔ったっぽい」
はい。
4.まとめ&おまけ
行程
- 新津(7:51発)→上越妙高(9:39着)/特急しらゆき2号
- 上越妙高(10:43発)→糸魚川(10:56着)/はくたか555号
- 糸魚川(11:49発)→市振(12:08着)/日本海ひすいライン普通
- 市振(15:06発)→直江津(16:32着)/日本海ひすいライン普通
- 直江津(17:58発)→越後湯沢(19:21着)/ほくほく線普通
- 越後湯沢(20:56発)→新潟(21:36着)/とき343号
- 新潟→新津/信越本線普通 ※時刻忘れました
料金
- えちごツーデーパス 2740円
- 新津―上越妙高 特急(指定席・乗継)1570円
- 上越妙高ー糸魚川 新幹線(自由席)880円
- 上越妙高ー糸魚川 乗車券 680円
- 越後湯沢ー新潟 新幹線(指定席)3370円
インスタもみてね
過去の記事もみてね
今回のメモリールート
おまけ
「旅程欲張るべからず💢💢💢💢💢」
申し訳ございませんでした。
ほんと食べる・呑むタイミング難しすぎわろた。
旅も失敗と反省を重ねて上手くなりましょう。